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2006年04月26日

●頭に浮かんだこと作文

[作文実践, 国語授業実践]

■指導法
  5分間、頭の中に浮かんだことを書く。それだけの作文の授業です。書き慣れるための指導法の一つです。

 まず、原稿用紙(400字)を各一枚配る。

 今、頭の中に浮かんでいることを書きなさい。

 『1分です』
 前置きなしに、いきなり切り出す。
 「え〜」との声が聞こえる。
 「何にも考えていないよ」
 『「何にも考えていないよ」、と考えたでしょ』
 『今、たった今、考えていることを書けばいいのです』
 半ば、強引に、
 『では、1分間です。よーい、どん』
 時計を見ながら進める。
 「こんなことでいいのかなぁ」と首をひねりながら一文書いている子がほとんどである。
 『では、やめ』
 1分たったことを確認し、声をかける。
 『では発表します』と言って、子どもたちの作文用紙を教師が読む。
 「だめー」と言う声もあるが、教師が読み進める。
・「早く家に帰ってねて〜」(男子)
・「どんな感じで書けばいいか分からない、って書こうかな」(女子1)
・「20分休み、ひなん訓練で、あまり遊べなかったな」(女子2)
 「いいです。その調子です。そういう文でいいんですよ」  一つひとつを認めてあげる。教師が読むと、初めは不安そうにしていた子も、ほめられて一安心している。
 『では、もう一度やります。また、一分間です』  今度は書き方が分かったのか、安心して取り組む。

 作文かぁ。
 めんどうくさいな。
 鼻がかゆい。
 目がかゆい。
 はらへったなぁ。
 ほかに何書こう

 文が重なってきていることがわかる。
 これも一分がたって発表会をした。

 今から5分間、つぎつぎに浮かんでくることを、できるだけ落とさずに書き続けなさい。

 『ポイントは浮かんでくることを「できるだけ落とさずに」書くことです』
 5分後にグループ発表会をする。やり方は以下の通り。

 1.グループで読み回す。(1グループ6名程度)
 2.よく書けているなぁと思う作品を一つ選ぶ。
 3.選んだ作品を教師が読み上げる。

 グループでの読み回しでは、声を上げて笑い出す子、「へー、そうなんだ」と興味深く読んでいる子と様々である。

■子どもの作文

 5分間で書くなんて、絶対むりだからね〜。こういうの苦手なんだよね〜。  また、だれか黒板に変なの書いてるよ。  ○男くん、ものすごくたいくつそう。○男くんって何考えているのか分かんないしね。  ×男くんと目があっちゃったよ。なんだかつかれてるかも。  防災くんれんとかさ、あれ「防災くんれんです」って言っちゃったらだめだと思う。「本当の火事です」とか言ってやったら、みんなあわてそうだな〜。でも、○男くんはあわてなさそう。  △男くん、かなり書いているよ〜。ピンチだよ〜。○子さんなんか裏にまでぎっしり書いてるしね。(6年男子)

 (うまく、落とさずに書けています。ぶつぶつ言っている感じがおもしろいです。)

 何かとてもだるい。
 なんだかつまらない。
 すごく眠い。
 花粉症でとてもつらい。
 先生、これでいいっていってくれるかなぁ。
 早く家に帰りたい。
 眠い。早く帰りたい。
 今年の阪神どうだろう。
 坪井完全復活するかな。
 早く帰ってオープン戦みたい。
 あ〜、つまんない。
 やることないな。
 この学校、毎日、休み時間に野球やらせてくれれば楽しくなるのに。
 あ〜ぁ、ボール一個なくしちゃったし、どうしよう。あそこの家のおじさん、こわいし、取ってもらえないよな。家の近く、野球の練習場ないし、家の前でやると、近所の人に怒られるし。じゃぁ、いったい何をすればいいんだ。

(だんだん、書くことが狭まってきて、一つのことに集中して書き始めていることが分かります。
 この子の頭の中をのぞいている気がしてきます。)

■追試しての新しい発見
 ・はじめはめんどぐさがっていた子どもも、授業が終わって感想を書いてもらったら、またやりたいとのことを書いていました。思いの外、長く書けたことを喜んでいました。
 ・唐突にやり方を説明し、5分間とるのではなく、1分間を2回とって、発表会をしたことにより、書き方のイメージをつかめたのがよかったと思います。
 ・5分間で書いてもらったとき、書きしぶる子どもがいましたので、書いている途中、そばに行き、教師が何かちょっかいを出して、反応したので「そのことを考えたでしょ」と言って、書かせました。

■参考文献
 ○戸田唯巳著「作文=どのように書かせるのか」(明治図書・1973年刊現在絶版)
 ○授業づくりネットワーク1993年11月号ナンバー74(学事出版)
  上條晴夫論文『「授業感想文」でヒットポイントをさぐる』
 今回の授業は上記の上條論文の追試です。原実践の発表会に関しては、詳しく書かれていませんでしたので、今回は5分後の発表会をグループにして読み回しをし、代表作品を選ぶこととして授業を行いました。
 戸田唯巳著「作文=どのように書かせるのか」は現在入手困難ですが、図書館で探してみてください。作文教育を行う上で必読書です。

2006年04月16日

●ディベートを行うまで(作文ワークショップ)

[作文実践, 教室ディベート]

 ディベートのワークショップを行うと、いつも同じような質問が出ます。
 例えば、次のような質問です。
「ディベートはむずかしい。どうすれば、このようなことが子どもたちにできるのですか。」
 そんなとき、次のように説明をします。

「新しい学年を持って、すぐにディベートをするわけではありません。
 順を追って子どもたちに指導をします。」
 その順とは、例えば以下の通りです。
①書く力をつける。(新学期早々、子どもたちの書く力を教師がつかむ。それに対して、必要だと思われる書く技術を教える。およそ、7月までは書き慣れることを中心に指導する。)
②スピーチ力をつける。(これは、夏休み明けから力を入れて指導する。スピーチはまず場慣れが一番である。)
もちろん、その学年、学級によって力の差がありますから、時期は多様です。また、ディベートそのもののレベルを落とすことも、上げることもあります。
 ここのところ、5,6年を続けて指導していたので、5年生では、証拠資料なしのディベート、6年生ではリサーチを含む証拠資料ありのディベートという具合に指導しました。

 ディベートをするまでにどのような指導をしているか、参考のために学内で私が行った作文ワークショップの資料がありましたのでpdf書類としてアップしておきます。
 この資料はご自由にお使いになって構いませんが、一応、池内に著作権があります。また、使用された場合、簡単な使用感をご報告していただけるとうれしいです。
 

 「作文ワークショップ」のPDF書類を見る。

 なお、ここの中の作文実践は、
"書けない子をなくす作文指導のコツとネタ" (上條 晴夫)
"教室スピーチ実践事例集" (学事出版)
を参考にしています。

2006年04月02日

●書くことと私(作文嫌いの理由)

[作文実践]

書くことと自分を考えてみる
 5年生になってから、国語の授業では書く機会が増えたと子どもたちが言っています。それは、私が自学に対しても文章を書くことを中心とした題材を与えていますので、この様に子ども達が感じているのは当たり前でしょう。
 文章を書くことが上手になるには、「書くこと」に対して抵抗を感じないようになることが一番大切です。たくさんの文章を書いて「書き慣れる」ことが一番なのです。
 さて、子どもたちは普段、書くことに対してどう考えているのでしょうか。

続きを読む "書くことと私(作文嫌いの理由)"

2005年08月15日

●書き出しを与える

[作文実践]

■書き出しを与える 「先生が決まった」
 始業式の後、クラスの短い時間を使って、「先生が決まった」の作文を書いてもらった。
 黒板に、次の様に書き出しを書く。

先生が決まった
          名前
 担任の先生が決まりました。
 いけち先生です。
 『今から10分あげますので、この書き出しで、作文を書いてください』
 400字の作文用紙を一枚配る。
 タイトルと名前を書いてもらう。
 『先生が、ストップウォッチで時間を計ります』
 全員、名前まで書き終えたことを確認し、『ヨーイ、ドン』
 一斉に書き始めた。
 みんな、真剣に書いている様子がうかがわれた、今までざわついていた教室が一斉にしんとなり鉛筆の音が聞こえ始めたからだ。
 前の担任の先生の指導が行き届いていると思った。
 以下、「これいいな」と思う作文を紹介する。

先生が決まった
           A男
 担任の先生が決まりました。
 いけち先生です。
 春休みの間、たんにんの先生は、U先生だと思っていました。
 でも、いけち先生は、はじめてのたんにんの先生なので、どうゆう先生がわからないので、ドキドキします。
 自分の予想が書けているのがいいです。
 また、「ドキドキ」という、くりかえし言葉がとても効果的に使われています。
 感じがとても伝わってきます。

 先生が決まった
           B男
 担任の先生が決まりました。
 いけち先生でした。
 とてもおもしろい先生だと思います。
 放送部でおんなじだったから、ちょっとだけなれています。
 4年生のたんにんの先生とやりかたがちがうから、ふあんです。
 でも、ちゃんと言うことを聞けば、だいじょうぶだと思います。
 でも、やりかたがちかうから、新しい、5年生になると、ぼくは思います。
 べんきょう、体育、その他のじゅぎょうをがんばりたいです。
 一年間、よろしくおねがいします。

 「やりかたがちかうから、新しい、5年生になると、ぼくは思います。」がとてもいいです。
 この文には、私自身、はっとさせられました。
 自分の考えがしっかりと書けています。
 みんな、今年一年、よろしくお願いします。(2002年4月「学級通信より)

●構成を教える

[作文実践]

■母の日礼拝の作文朗読
 学校で母の日礼拝が行われた。
 毎年恒例の行事である。
お母様方を迎え、礼拝をし、その後、1年生から6年生がお母様方に感謝する出し物をする。
5年生は、いつも作文朗読である。
 今回、この作文朗読のための原稿をみんなに書いてもらった。

■構成を教えて書く
 5年生の作文朗読は2名と決まっている。
 持ち時間は10分である。出入りの時間を2分として、8分。一人、4分である。
 4分の時間だと、原稿用紙3枚から4枚程度の規模の作文となる。
 5年生のこの時期に書かせる量としては多い。
 そこで、以下のように指導した。
 1.構成を教える。
 自由に書かせるというより、構成を教えることで、誰にでも書けるようにした。
 2.構成ごとに細切れにして書く。
 3.細切れにした作文をつなぐ文を考え、ひと固まりの作文にする。
 構成は、次のようである。

1)簡単なお母さんの紹介。(2〜3行)
2)お母さんのおもしろいこと、失敗談などの紹介。(1枚目)
3)お母さんのすごいところ、いいところの紹介。(2枚目)
4)お母さんに感謝するところの紹介しまとめる。(3枚目)

 おおざっぱにいって、これで3枚程度の作文が書けるようになる。
 2)から4)に書けては、その題材を、番号作文で書かせ、その中から、自分でこれがいいなと思ったことを1つ選び、そのネタで書くように指導した。

■作文例
 作文朗読に選ばれた児童の作文を紹介する。

ちょっとかわいいお母さん
 私のお母さんは、おっちょこちょいでもあるし、すごいところもあるし、もちろん、感謝することもある、とってもすてきなお母さんです。
 この前、私のお母さんは、ちょっとおっちょこちょいをした。それもいつもよくするものだ。
 デパートで、お母さんと私が買い物をしていたら、よその子が、
「お母さ〜ん!」
と言って、自分のお母さんをさがしているのに、私のお母さんは、
「な〜に?こっちよ〜!」
と言ってしまった。
 私はとっさに、
「S子は、ここにいるじゃん」と言った。
お母さんは「へ?」というように私の顔を見た。
私とお母さんは、二人で笑った。
なぜか、その時、とても気持ちがよかった。 私は「お母さんにも、こんな、かわいいところもあるんだな」と思った。
 
 でも、私のお母さんは、おっちょこちょいばかりしているわけではない。
 すごいところだって、もちろんある。
 私のお母さんの料理は最高だ。
 私の一日の夜の楽しみはもちろん夕食だ。
「ごはんよ〜!」
 その声を聞くと、私は、一目散に飛んでいく。
「今日のごはんは何かな?」
 うきうきしながらリビングへ行く。
「あ、今日は、カレーだ!」
 おいしすぎて、おかわりをしないと気がすまない。
 うちの家族は、みんなお母さんの料理が大好きである。
 お父さんなんかは、「世界一」などと言っている。
 なかでも特に大好きな料理は、
「あじの開きに、ほかほかごはんに、おみそしる」
 私はよくお母さんに、「食べすぎ!」と言われてしまう。
 
こんなくいしんぼうな私だけれど、お母さんには、とっても感謝している。
 
 私が病気の時は、いつも、私の好きな食べ物を買ってきてくれる。
「S子、何食べたい?ママ、今、買ってきてあげる」
と言って、買ってきてくれる。
「ありがとう」と私はその時思う。
 また、かぜの時は、いつもいっしょに寝てくれる。お母さんに「どうして?」と聞くと、「もし、気持ちが悪くなったら、近くにいればすぐわかるでしょ」と、言ってくれた。
 私はそんな、お母さんが大好きです。
 いつまでも、かわいくて、元気いっぱいのお母さんでいてください。

●会話文を考える ー友だちの作文を読んでー

[作文実践]

■ 友だちの作文を読む
 「母の日の作文」(構成を教えるー母の日の作文ー)を使って授業をした。
 作文の書き方は上記のリンクをたどってもらいたい。
 児童の作文を再掲する。

ちょっとかわいいお母さん
 私のお母さんは、おっちょこちょいでもあるし、すごいところもあるし、もちろん、感謝することもある、とってもすてきなお母さんです。
 この前、私のお母さんは、ちょっとおっちょこちょいをした。それもいつもよくするものだ。
 デパートで、お母さんと私が買い物をしていたら、よその子が、
「お母さ〜ん!」
と言って、自分のお母さんをさがしているのに、私のお母さんは、
「な〜に?こっちよ〜!」
と言ってしまった。
 私はとっさに、
「S子は、ここにいるじゃん」と言った。
お母さんは「へ?」というように私の顔を見た。
私とお母さんは、二人で笑った。
なぜか、その時、とても気持ちがよかった。 私は「お母さんにも、こんな、かわいいところもあるんだな」と思った。
 
でも、私のお母さんは、おっちょこちょいばかりしているわけではない。
すごいところだって、もちろんある。
私のお母さんの料理は最高だ。
私の一日の夜の楽しみはもちろん夕食だ。
「ごはんよ〜!」
その声を聞くと、私は、一目散に飛んでいく。
「今日のごはんは何かな?」
うきうきしながらリビングへ行く。
「あ、今日は、カレーだ!」
おいしすぎて、おかわりをしないと気がすまない。
うちの家族は、みんなお母さんの料理が大好きである。
お父さんなんかは、「世界一」などと言っている。
なかでも特に大好きな料理は、
「あじの開きに、ほかほかごはんに、おみそしる」
私はよくお母さんに、「食べすぎ!」と言われてしまう。
 
こんなくいしんぼうな私だけれど、お母さんには、とっても感謝している。
 
私が病気の時は、いつも、私の好きな食べ物を買ってきてくれる。
「S子、何食べたい?ママ、今、買ってきてあげる」
と言って、買ってきてくれる。
「ありがとう」と私はその時思う。
また、かぜの時は、いつもいっしょに寝てくれる。お母さんに「どうして?」と聞くと、「もし、気持ちが悪くなったら、近くにいればすぐわかるでしょ」と、言ってくれた。
私はそんな、お母さんが大好きです。
いつまでも、かわいくて、元気いっぱいのお母さんでいてください。
 ワープロで清書した作文をB4の紙に印刷し全員に配る。
 教師が一度範読する。
 読み終えると、次の指示をした。
 『この作文を読んで、「これいいな」と思ったところに赤線を引いてください』
 時間を5分とった。
 次に線を引いたところを発表してもらう。 
 子どもたちの多くは、気持ちの表現がうまく書かれているところに線を引いていた。
 たとえば、次の文である。

 ・なぜか、その時、とても気持ちがよかった。
 ・その声を聞くと、私は、一目散に飛んでいく。

 どれも、いいところに気がついたことをほめる。
 そして、次の指示を出す。
 『先生がいうところを青線を使って引きなさい』
カギカッコに全て線を引きます
 引き終えたころを見計らい、全部で15個所あることを確認させる。
 『この作文にはカギカッコがたくさん使われています。
  よく見ると、これらのカギカッコは3種類の使い方がされています.
  どんな種類の使い方があるかを考えてください』
と言い、黒板に1.2.3.と書く。
 少し、戸惑った様子であったが、1つ目の会話文はすぐに解答がでる。
 たとえば、次の文である。
 「な〜に?こっちよ〜!」  と言ってしまった。   私はとっさに、  「S子は、ここにいるじゃん」と言った。  (実際に言った会話をカギカッコでくくる。)
 この調子で2つ目もすぐに正解がでた。
 自分が心の中で思ったことである。
 私は「お母さんにも、こんな、かわいいところもあるんだな」と思った。  (自分が心の中で思ったことをカギカッコでくくる。)
 3つ目がなかなか出てこなかったが、この部分のカギカッコの使い方が違うことはすぐにわかったようである。

 「あじの開きに、ほかほかごはんに、おみそしる」  (強調表現としてカギカッコでくくる。)
 強調表現である。カギカッコを使って、その部分を強めているのである。

 以上、カギカッコの3つの使い方を整理し、この作文にはこのように、カギカッコを上手に使っていることを知らせた。カギカッコを使うことで、臨場感や、自分の気持ちなどを表現しているのである。
 もちろん、この作文を書いた子がこの表現手法を自覚的に使ってかいたわけではない。今までの作文の経験からこのような表現手法を使ったものであろう。
 しかし、この無自覚を自覚的に使うことで、作文が上手になる。なぜならば、表現手法を知ることによって、その手法を意図的に使えるようになるからである。

 作文を読むとき、「この作文いいな」と思う。そうしたら、どうしてこの作文がいいなと思ったかを考えるといい。必ず、表現の仕方に工夫があるはずである。(2002年5月20日)

●俳句作文

[作文実践]

■指導法
 俳句作文とは、俳句を読んで、その作者になったつもりで、その俳句を作った時を想像して書く作文です。

 次のように授業をしました。
 『今日は俳句作文をします。』
 と告げ、教科書(学校図書)から選んだ以下の三つの句を黒板に書きます。

 ・夕立があがりまた街動き出す
 ・ひがん花だけがもえてる長い雨
 ・残されてひとりの教室きくにおう

 『この三つの句の中から一句選びます』
 その句を作った作者になったつもりになって、その俳句が作られた時の様子を想像して作文を書きます。
 質問が一つ出ました。
「自分でお話を作っていいんですか」
『はい、そうです。俳句から想像して、自分でお話をつくってください』
 作文用紙を一枚(四百字)配り、書き始めます。

■子どもの作文
 「夕立があがりまた街動き出す」
 今日、街へ散歩に行くと、空からこつぶの夕立が降ってきました。
 かさを持っていない私は、街のレストランの前で雨宿りをしました。
 「どうせ、夕立だからすぐやむな」
と思っていました。
 ふと、街をみると、雨にぬれて急いで帰っていく人たちや、店に入って雨宿りをする人たちの姿が多く見られます。
 しばらくたつと、街は、何だかどことなくさみしいふんい気をただよわせています。いつもにぎやかな街も、今は静かです。
 数十分後、夕立があがりました。
 太陽も顔を出してきました。
 今まで雨宿りをしていた人たちも店から出てきます。
 また、街に活気がもどってきました。(六年女子)

 「ひがん花だけがもえてる長い雨」
 あー、今日は雨。天気予報によると一日中雨らしい。
「外で遊びたかったのに」 と思いつつ、部屋でテレビを見ながら寝転がっていた。
 と、そこに、声が聞こえてきた。
「おつかいに行って来て」 お母さんの声だ。
 いやいやながらも、おつかいに出かけた。
 途中、スーパーに向かう前にお寺がある。そこに、雨にぬれたひがん花が咲いているのに気がついた。
 こんなに私は雨でどんよりした気持ちなのに、そのひがん花だけは、まるで燃えているように赤くきれいに咲いている。
 おつかいから帰ってきた私は、何だか今までのどんよりした気持ちを忘れてしまったように、宿題に取りかかるのであった。(六年女子)

 「残されてひとりの教室きくにおう」
 今は放課後。私は花係で、教室の花一つひとつに水をやらなくてはいけない。今は、昨日私と同じ花係の子が持ってきてくれた、きくの花がいっぱいある。
 「じゃあねー」
 「ごめ〜ん、もう帰るね」 友達が次々と教室から出ていく。ついに、私とそうじが終わった男の子しかいなくなってしまった。
 すると、その男の子もそそくさと帰ってしまった。もう、教室にいるのは、私ときくの花だけ。取り残された気になり、さびしくて泣きそうになった。すると、いつもはあまりにおいのしないきくが、ふんわりといい香りをさせている。まるで、私をなぐさめるようににおいだしたそのきくは、なぜだかすごくやさしい気分に私をさせてくれるのだ。
 そして、仕事を終えた私もその教室を出た。だれもいない教室とやさしいきくのにおいを残して。(六年女子)

■参考文献
 青木幹勇著「俳句を読む、俳句を作る」(太郎次郎社1992年)
 「俳句を散文にしてみる」の小見出しがついています。この実践の概略を引用すると、「(俳句を散文にしてみるとは)読み手の子どもが仮に作者になって、句の理解を散文に書かせてみる形なのです。教師がくどくどと句の説明をしたり、小刻みな発問をして、子どもたちを引きまわすことをしないで、このような短文を書いて参考にさせます。子どもたちは、これを手引きにして、各自に教材文の一句か二句を選び、短い散文に書きかえるのです。」と書いてあります。
 今回の授業はこれをもとに授業を作りました。

●俳句であそぼう

[作文実践]

【指導のねらい】
 俳句の一部を伏せ字にしたクイズ形式のゲームである。次の三つのねらいがある。
 (1) クイズの答えを考えながら、遊び感覚で俳句に慣れ親しむ。
 (2) 俳句の言葉を考えながら、創作者の立場を体験する。
 (3) みんなでいろいろな意見を出しながら、俳句を鑑賞し合う。

【ゲームのやり方】
 (1) 子どもの興味に合わせた俳句を人数分選び、一部を伏せ字にする。それらを一枚ずつカードに書く。
 (2) 一人一枚カードを配り、それぞれ伏せ字の部分を考える。
 (3) 考えた言葉を一人ずつ発表し、聞いている子たちは伏せ字の部分をメモする。そのとき、自分の考えも付け加える。
 (4) 考えが分かれたものについて、全体で話し合う。
 (5) すべての俳句の伏せ字について最終的な自分の答えを選ぶ。
 (6) 最後に正しい句を発表し、正解の数を競う。

■【授業のながれ】
1 五七五クイズをしよう(5分)
 教師は以下のカードを黒板に貼り、○に入る文字を考える。

 例  ○○○○の ラッパの中から 春が来る 

2 クイズの答えを考えよう(15分)
 教師は例題と同じようなカードを二人に一枚ずつ配る。さらに、解答用紙も配布し、3分間で答えを書かせる。時間になったところで二人で発表する。発表者には、以下の三つを注意する。
・カードを全員によく見せる。
・五七五のすべてを2回繰り返して読む。(一人)
・なぜその言葉にしたのか簡単な理由を言う。(一人)
 また、聞いている子たちは「友達の答え」と、それを聞いて思いついた「自分の答え」を解答用紙に書く。
3 クイズの答えを検討しよう(10分)
 黒板に全員分のカードが貼られ、子どもたちの発表した答えが書き添えられたところで、教師が問う。

 この中で「これはおかしい」と思うのはどれですか?

4 ゲームの勝敗を決定しよう(10分)
 残り10分になったところで、教師は話し合いを打ち切る。

 今までの意見を参考に、最終的な自分の答えを選びましょう。

 教師は俳句を伏せ字のままで次々に読み上げる。その間に、子どもたちは解答用紙のメモを見ながら、一つだけ「最後の答え」を選ぶ。全部の答えが書き終わったのを確認し、正解発表をする。


以下は、俳句と答えである。

(1) やきたての ○○○○みたいな 春の風(小4)
   (正解:クッキー)
(2) ささぶねに のせてみたいな ○○○○を(小1)
   (正解:ありさん)
(3) かしわもち 弟三つ 姉○○○(小5)
   (正解:一つ)
(4) 黒板に ○○○○いっぱい 終業式(小5)
   (正解:らくがき)
(5) ○○○○○○ たしかに母の はくしゅ聞く(小4)
   (正解:学芸会)
(6) ゆきだるま ○○○をつけて おともだち(小1)
   (正解:名まえ)
(7) どこみても ディズニーランド ○○の色(小3)
   (正解:春)
(8) のき先の ○○○バンドが ドレミファソ(小4)
   (正解:つらら)
(9) ○○○○が 「きをつけ」をして のびていく(小1)
   (正解:かいわれ)
(10) おりがみさん いま○○○○に してあげる(小2)
   (正解:ペンギン)
(11) せんこう花火 ○○○みたいに おちました(小3)
   (正解:なみだ)
(12) 朝つゆで ○○○が顔を あらってる(小2)
   (正解:トマト)
(13) 早口に なるよ○○○を 食べるとき(小4)
   (正解:すいか)
(14) ○○○○○ パクッとたべる 春の味(小4)
   (正解:さくらもち)
(15) 男の子 すみで小さく ○○○○○(小5)
   (正解:ひなまつり)
(16) 節分の おにはやさしい ○○○○○(小3)
   (正解:お父さん)
(17) いつもより みんなきれいだ ○○○○○(小5)
   (正解:七五三)
(18) お年玉 ふくろをあけて ○○○○○(小2)
   (正解:ありがとう)
(19) ○○○きた 先生のかお はずかしそう(小2)
   (正解:水ぎ)
(20) さんかん日 うしろにかあさん いい○○○(小1)
   (正解:におい)
(21) なつやすみ たいくつそうな ○○○○○(小3)
   (正解:ランドセル)

■伝言板
 この授業は佐内信之氏の「俳句のアニマシオン」学習ゲーム研究会HPの追試である。参照していただきたい。
 ただし、授業にあたっては、俳句の精選をし、分かりにくいものは省いた。
 追試した結果、原実践と同様な流れとなり、安定したゲームであることが分かった。

●鉛筆対談で「物当てゲーム」

[作文実践]

鉛筆対談で「物当てゲーム」(1999年4年生の実践)

『物当てゲームをします。二人一組となり、相手が考えた物の名前を当てるというゲームです』
 クラスの中に、「やったことある」という子が大勢いた。

 今日は、鉛筆対談でこのゲームをします。
 クラス中、「え〜!」の声が響く。中に、「おもしろそ〜」という声もある。
 『隣同士が組になります』と言って、四百字詰め作文用紙を一枚と五センチメートル四方の紙片を全員に配った。
 次のようにゲームの説明をする。
『小さい紙に自分が考えた回答を書きます。相手に分からないように書きます。回答には相手が絶対知っているものを書くのがポイントです。
 作文用紙には一行目に「物当てえんぴつ対談」と題名を書きます。二行目には自分の名前と相手の名前を書きます』
 全員書き終わるのを確認し、次の説明をした。

 ゲームのやり方は鉛筆対談と同じです。互いに質問を書いたら同時に作文用紙を交換します。そして、その質問に答えてあげてください。先に相手の答えが分かった方が勝ちです。

 説明の後、質問を聞く。
「相手の回答を当てたら終わりにしていいですか」の質問には、ちょっと考えて、『ゲームはお互いが、回答を当てた時に終わりにしてください』と答えた。

●物当てゲーム開始
 『では、始めます』といってストップウォッチを押すと、全員一気に書き始めた。二、三回質問が続いたところで、「わかった〜」という声が上がる。みんな「すごいなぁ」と感心している。
 途中、「むずかしいなぁ」と首を傾げる子どもがいたので、『なかなか分からなかったらヒントをもらっちゃおう』とアドバイスをした。
 当たる度に歓声が上がる。
 後半、双方が終わってしまったチームが出てきたので、第2回戦をするように指示をした。
 十分経過後、『時間です。鉛筆を置きます』と声をかける。両方分からなかったチームはなく、片方分からなかったチームが三組あった。
 以下、子どもの作品を紹介する。

 物当てえんぴつ対談
            M・W Y・M
 W・それは重いですか。
 Y・あまり重くないと思うよ。
 W・大きいものですか。小さいものですか。
 Y・大きいものだよ。
 W・落とすと割れますか。
 Y・多分こわれないと思うよ。
 W・それは、どの季節とかにやったりしますか。
 Y・春と夏の間ぐらいだね。
 W・なんかヒントをください。
 Y・男の子の節句といったら。
 W・それはかたいですか。
 Y・ふにゃふにゃしていて泳いでいます。
 W・わかった。こいのぼりだ。
 Y・あたり。おめでとう。


 物当てゲームをしながら会話を楽しんでいる様子がよく出ているいい作品である。

●子どもの授業感想
  授業感想をとると、5(とてもおもしろい)が22人、4(おもしろい)18人と好評の授業であった。感想の中で、「前にも同じゲームをしたことがあるけれど、えんぴつ対談でやる方がおもしろい」と書いてくれた子どももいた。

●まんがでえんぴつ対談

[作文実践]

●授業のへそ
 子どもたちはマンガが大好きである。この授業では、その大好きなまんがを鉛筆対談を通して、文章を書き慣れることを促すことを目的とした。(4年生)

●授業のながれ
 帰りの会の時、次のように連絡を言う。
『明日授業でまんがを使いますから、お家から一冊、自分が好きなまんがを一冊持ってきてください』
 こう言っただけで子どもたちは大騒ぎである。「どんなまんがでもいいんですか」との質問に、『あまり荷物にならないように、コミックに限りましょう』と答えた。
 次の日の国語の時間である。
 今日はまんがをみんなで読んでもらいます。これから十分間みんなが持ってきたまんがを読みます。
『となり同士で一冊のまんがを読みます。二冊あるグループはどちら読むまんがを決めてください』
『では、十分間読んでください』
 教室はシーンと静まり返る。みんな一言も口を聞かずに真剣に読んでいる。
 時々、笑い声が聞こえてくる。
 教師が作文用紙の用意をしているのを見ていた女の子が、「感想文を書くのかな」といやそうな声を出していた。
『十分たちました。読むのをやめてください』

 これから、みんなが読んだまんがについて「鉛筆対談」をしてもらいます。
 鉛筆対談は、以前にもやったことがあるが、一応やり方を確認をした。

 鉛筆でするおしゃべりです。

   き 「           」

   い 「           」

  と書いていきます。

  はじめの人は「このマンガおもしろいね」ではじめます。

 鉛筆対談と聞いて、子どもたちはまた喜んだ。「感想文」と言った子もうれしそうな表情をしている。
 二人に一枚四百字詰めの作文用紙を配る。
 題名を「まんがで鉛筆対談」とし、二行目にお互いの名前を書かせた。三行目から対談の始まりを書くことを説明した。
 『では、これから十分取りますので、鉛筆対談をはじめてください』
 教室はまた静まり返る。鉛筆の音だけが聞こえてくる。
 五分がたち、二枚目を取りに来るグループが出始めてきた。
 十分が経とうとしたとき、どのグループも終っていなかったので、『あと三分延長します。まとめてください』と指示をした。
 『では、時間です。やめてください』
 『残りの時間で発表会をします』
 全員にしてもらいたかったが時間が足りないので三組の発表になった。
 手を挙げたグループを指名し、前に出てもらう。教師はその子たち後ろに立ち、発表をしてもらった。
 次の対談はその中の一組のものである。

 「ちびまる子ちゃん」私が好きな歌 集英社刊
                    (さ)さや (ま)まな
  ま ねぇ、このまんがおもしろいね。
  さ うんうん。でも、一番最初におもしろいのって、表紙かなぁ。
  ま そう?私は表紙でかったりするけどあんがいなかみの方がおもしろい場合
    もあるよ。
  さ まるちゃんってしぶいでしょ。だから、しぶいお茶すきなのかなぁ〜。
    私は、ち〜としぶめのお茶がすきだな。
  ま 私、まるちゃんはいっけんしぶいけど陽気な方だと思う。お茶はいつもい
    れてるけど、私はうすい方がすきだな。
  さ でも、うすすぎても、ちょっと・・・。
    私、思ったんだけど、まるちゃんが好きな歌のかえ歌って、さくらもも子
    さんが作った曲なのかな〜。
  ま 本当にあるじゃん。だって、自分で作るひまがあるならマンガの原こう早
    く終わらせたいと思うだろうし、げんにあとがきってゆ〜か、そういう所
    で”もうダメ”って言ってんじゃん。
    考えてんならやっぱ絵だよ、絵。
  さ 話かわるけど、私、さっき見たんだけど、はまじたちのバンドって売れそ
    うもないような感じしない。だったら、大野くんたちのバンドの方がいい
    かもってか!
  ま そう?なんか売れないバンドっていうより私はバンドしながらお笑いやっ
    てスターになるってかんじだけどなぁ。
  さ でもさ〜、まるちゃんマンガっておもしろいのと、ち〜とした感動が入っ
    てるからいいと思うな。
  ま そうだね。サヤ、さくらもも子さんあてにそのままファンレター書け
    ば・・・?
  さ じゃぁ、いっしょに書いてよネ〜!!
  ま うん、じゃ、そうしよう。
 とりとめのない会話の中にもお互いが自分の考えを述べているえんぴつ対談になっている。
 お茶のところではみんなからの笑いがたえなかった。四年生でお茶の渋さを話題にしているのがおもしろい。
 最後はお互いにファンレターを書くことで、うまくまとめているのがとてもいい。
 授業の終わりに授業感想を書いてもらった。五段階評価で全員が五を付けた。
 主な理由は、
・まんがについて語り合えたのが良かった。
・鉛筆対談がおもしろかった。
・授業中にまんがが読めるなってサイコー。
などがあげられた。

●伝言板
 鉛筆対談の実践は「よい文の書き方」佐藤茂・柳内達雄著(昭和二十七年・牧書店刊)に読書感想の実践が掲載されている。本を読みその感想を鉛筆対談で行うというものである。今回は、まんがを使って鉛筆対談をした。

2005年08月14日

●算数文章題作文

[作文実践]

 算数文章題作文とは、ぼくのネーミングである。
 算数の文章題を解くときに、単に式、答えを書くのではなく、文章と図式を用いて解答するというものだ。
 まぁ、問題集における、問題の解答の解説を書くと考えてもいい。

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