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2006年04月10日

●この論題で「総合」を創ろう

1.小学校での総合的学習の論題

2.この論題で総合を創ろう

    論題1「○年○組は自由席にすべきである」

    論題2「○○学校に飲み物の自動販売機を設置すべきである」

    論題3「日本は飲料の容器のデポジット制度を導入すべきである」

1.小学校での総合的学習の論題

 小学校で総合が始まる。総合的な学習でのねらいはその一つとして、「学び方やものの考え方を身に付け、問題の解決や探求活動に主体的、創造的に取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにすること」(小学校学習指導要領より)とある。このねらいはディベートのねらいと同じである。つまり、ディベートを学ぶ中で取得される技術は学び方やものの考え方を学ぶ技術そのものであるからである。たとえば、自分の考えを論理的に述べる技術、リンクマップの手法等々である。
 今回の総合的な学習に向けての論題は、ディベートの手法を学ぶ入門的な論題を一つ。そして、ディベートを体験してその手法を使う応用的な論題として環境問題に関する論題を二つ選んだ。なぜ環境問題の論題を選んだかというと、その理由は、一つの論題から、その論題を通して発展的に考えられるからである。たとえば、「日本は飲料の容器のデポジット制度を導入すべきである」という論題の場合。空き缶、ペットボトルという身近なモノを追求することによって、地域、社会、国際理解と思考が発展していくはずである。

2.この論題で総合を創ろう

論題1「○年○組は自由席にすべきである」

 ●ねらい 今や教室ディベートの定番となった論題である。いきなりディベートをやったことのない学級で多くのリサーチを必要とする論題でディベートを行うことは難しい。そこで、リサーチがあまり負担でない、教室内での身近な問題を取り上げディベートがディベート入門期にはいい。(小学校ディベートワークシート 上條晴夫・拙共著 学事出版刊参照))

 ●争点 自由席とは、児童が毎朝登校したときに自由にその日一日好きな座席を決めることができるということである。子ども達はある程度自己努力によって好きな席に座ることができるのである。子ども達にとって席替えとは学校生活の中で特に関心のある学級活動である。席替えをするとき必ずと言っていいほど、その席替え方法を「好きなもの同士」と言ってくる。そこで、自由席のやり方を教え、この方法で席を決めるとどうなるかを考えさせる。簡単に考えれば、自分の希望通りの席に座れそうである。しかし、席には当然限りがあるわけであるから、その日うまく席が取れなかった児童は我慢をしなければならない。また、視力の弱い児童の配慮はどうすればいいか。好きなもの同士で座ってしまったら私語が増えるのではないか。いや、そんなことはなく、学習の教え合いができ、効率よく学習ができるという意見も出てくる。

●メリット・デメリット
 (M)学校生活が楽しくなる
 (M)成績が上がる
 (M)友だちが増える
 (D)仲間はずれがおきる
 (D)おしゃべりがふえる
 (D)先生が座席を覚えられない
論題2「○○学校に飲み物の自動販売機を設置すべきである」

 ●ねらい 簡単なディベートを経験してからこの論題で行うといい。リサーチもできる。
 毎日休み時間になると子ども達は水道で水を飲む。夏の暑い時期になると水道のところに列をつくるほどである。しかし、この水は本当に安全な水なのであろうか。多くの学校では、一度ポンプでタンクにためた水を使っている。水の安全性を考え、環境問題に発展させることができる論題である。(小学校はじめてのディベート授業 拙著 学事出版刊参照)

 ●争点 水道水は、カビ臭い、薬のにおいがする、生ぬるい等、いろいろな問題点を抱えている。国の安全基準をクリアしているものの、最近ではトリハロメタンが含まれているとか、アスベストが混入しているとか言われている。
 一方、現代は飲み水を売っている時代である。手軽に安全な水を購入することができる。一般家庭でも、水道水を使わずに飲料用にはこのような「安全な水」を使用している家庭が増えてきていると聞く。
 ではなぜ、子どもの飲料水はそうできないのであろうか。そこで、学校に飲み物の自動販売機を設置することを論題にし、議論を進めたい。
 水道水の安全性の検証と飲料水の費用とが争点となる。

 ●メリット・デメリット
 (M)安全な飲料水が飲める。
 (M)好きな味の飲料水が選べる
 (M)冷たい(暖かい)飲み物が飲める
 (D)飲むのに費用がかかる
 (D)児童がお金を持ってくる
 (D)糖分を必要以上に取りすぎる

論題3「日本は飲料の容器のデポジット制度を導入すべきである」

 ●ねらい デポジット制度とは,商品に一定額の預り金(=デポジット)を上乗せして販売し,容器等を返却されたときにそれを払い戻すという制度である。現在行われているデポジット制度で有名なのはビールびんである。ビールびんの場合、一本返却すれば五円消費者に戻ってくる。茶色のビールびんの場合、平均十五回再使用されており、リサイクル率で評価すると九十五%にあたるそうである。
 現代は使い捨て社会と言われている。何でも手軽なモノは消費され後はゴミとして処分されていく。ペットボトルがいい例である。
 限られた資源を有効に使いゴミを増やさない社会へとこれから日本は変わって行かなくてはならない。空き缶一本の処分から環境問題、そして日本の消費社会へと追求できる論題である。
 以下、この論題における具体的な肯定側立論と否定側立論を例にあげる。反駁の練習にも使えるようにかなり粗く作ってみた。なお、証拠資料は今回は全てインターネットのホームページとパソコン通信で新聞検索をして収集した。学校での授業ではなかなか書籍の情報収集は難しい。しかし、パソコンを使っての情報収集は至って簡単であるからである。検索サイトYahooで検索をすると多くのホームページがヒットする。

論題「日本は飲料の容器のデポジット制度を導入すべきである」
 肯定側モデル立論例
 これから肯定側立論を述べます。はじめに定義を三点述べます。
1,飲料とは、ジュース、清涼飲料水、アルコール飲料とします。
2、容器とはそれらの入っている容器で、ビン、カン、ペットボトルとします。紙容器のものは含まれません。
3,デポジット制度を導入するとは、商品に一定額の預り金を上乗せして販売し,容器等を返却されたときにそれを払い戻すという制度を法制化することを意味します。
 次にプランを三点述べます。1,今から2年後の4月より日本は飲料の容器のデポジット制度を導入する法律を制定します。2,デポジットの金額は一律10円とします。3,2年間でデポジット制度の広報活動をします。
 以上のプランを採用することによって起きるメリットを一点述べます。メリットは「ごみの減量化」です。
 メリットが起きる道すじを説明します。プランを行います。そうすると、購入した飲料の容器を小売店等に返却して、預り金をもらうことになります。このように容器をお店に返せばお金が戻ってくるわけですから、飲料の容器返却率は上がります。証拠資料を述べます。出典はインターネットホームページ「デポジット法制定全国ネット」からです。
「大分県国東郡姫島村「空き缶等の散乱の防止による環境美化に関する条例」でデポジットを位置づけ、事業を行っています。識別シール貼付方式 預り金 10円 回収率 八九.三二%(平成八年度) 」引用を終わります。
 このように、デポジット方式を行うと約九〇パーセントもの容器回収ができることが分かります。回収された容器は再利用されますのでゴミになりません。結果、ゴミが減少されることになります。次にアメリカニューヨーク州の例をあげます。同ホームページからの引用です。「散乱ごみ対策として1982年、飲料容器(びん、缶、ペットボトル)に対するデポジット法が可決された。5セント(=5円)のデポジットで、翌年(1983年)から実施。導入一年で散乱は15%減少。埋め立てごみも20万トン滅少するというめざましい結果を出した。回収率 80%」引用を終わります。
 このようにデポジット制を導入すると確実にゴミが減少することが分かります。
 次に、なぜこのメリットが大切なのかを説明します。ゴミの増大が今、大きな社会問題になっていることはご存知だと思います。このような状況のもとでデポジット制を導入することによってゴミが減少するわけですからこれはとっても大切なメリットなのです。
 以上で肯定側立論を終わります。

 否定側モデル立論例
 否定側は現状を指示します。肯定側のプランを採用することによって起きるデメリットを一点述べます。デメリットは「消費者の負担が増大する」と言うことです。
 プランを採用します。そうすると飲料の容器の回収率が上がります。そうすると、その容器は再利用されたり、メーカーの方で処分されることになります。では、その費用はどのくらいかかるのでしょうか。運送費はもちろんの事ですが、ここでは、実際に処理に必要な金額を提示します。
 毎日新聞99.03.10中部本紙夕刊より引用します。『ペットボトルは)処理費用は収集・運搬のほかボトル内の異物除去、圧縮の手間から1トン当たり30万円弱もかかり、普通のごみ(約5万円)の約6倍という。丈夫で軽く、使い勝手の良いペットボトルだが、使用後は厄介ものになっている。』引用を終わります。
 今人気のペットボトルの処理費用はなんと普通ゴミの約6倍もかかるということです。
 では、この費用は一体どこから出るのでしょうか。もちろん企業がこの費用を捻出しなくてはなりません。ある程度の企業努力でこの費用の一部はまかなえるかもしれませんが、実際には商品にかかってくる事になります。そうすることによって「消費者の負担が増大する」というデメリットが起きます。
 次になぜこのデメリットが重大なのかを説明します。今は不況です。消費が思うように伸びない時代です。このようなとき、生活で必要なものが値上がりをし、消費者に負担がかかるようになると、なおさら消費が押さえられてしまいます。これはとても重大な問題です。
 以上で否定側立論を終わります。

 全国教室ディベート連盟編 "小学校 ディベート授業がてがるにできるモデル立論集ファックス資料 総合的学習に役立つ" (学事出版)より、モデル立論を引用。
 なお、この立論集には、第一反駁及び、第二反駁まで掲載されている。ディベートに関心がある方は、ぜひ、お読みいただきたい。

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コメント

論題3!私も参加したいです笑。
去年の学校の授業で、飲料容器がデポジット制になっているイベントに参加しました。そのイベント、小学生の参加率が高くて、でも小学生にはデポジット制とか、なんでデポジットがいいのか?とか詳しいことはよくわかってなかったようなので(説明する展示パネルはあったんですけど)、こんな感じで授業で取り上げるのはいいことだなぁと思い、思わず書き込みしてしまいました。

 環境問題がクローズアップされている今、この様なディベートは是非、お薦めですよね。
 最近は中学年担任でちょっとディベートからは離れているんですが、高学年を持ったらまたディベート授業を実践したいと思っています。

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