●国語辞典作文(2)
先の授業で行った国語辞典作文を、毎日の自学に出すことにした。
自学ノートは七mm方眼で、一ページあたり500文字程度の文字数が書ける。レイアウトをすると、だいたい400文字程度の作文が書ける量である。
今日から、毎日自学ノートで、「国語辞典作文」を書きます。
『書き方は、授業でやったやり方と同じです』
と言い、毎日の課題とした。
翌日、クラスに行くと、登校してきた子どもたちの自学ノートが教卓の上に積まれている。
早速、ノートを見ながら丸をつける。
自学ノートの見方は以下のようにする。
1・課題の作文が書いてあれば、花丸をつける。
2・いい書き方や発想が書いてあれば、赤線を引き、文に丸をつける。
3・必要に応じて簡単にコメントをつける(あまりしない)。
4・その日に読み聞かせしたいものを二、三冊選ぶ。
こうすることで、朝の時点で8割方の自学ノートを読むことができる。
I子の作文を紹介する。
人形(6月24日)
『にんぎょう【人形】人のすがたをまねて作ったもの。おもちゃやかざりにしたりえんげきで使ったりするもの。(英語 doll)』(くもんの学習国語辞典)
人形って人のすがたをまねて作ったものだったのか。
自分は、人形といったらくまのとかうさぎのとかがうかんでくる。
私は人形ということばでこんなことを思い出した。
それは、私がかぜの時、おばあちゃんが、
「かわいい人形でしょ」
と言って、人間の形をした目のあくのをくれた。
その時、私は、
「人形? かわい「?」
と思った。それは私が思っていた人形とはるかにちがうものだった。
私が思っていたのは、くま・うさぎ・ねこと、そのような動物のことだ。
でも、考えてみれば、人形と書くのだから、もちろん人の形というのかなと思った。
では、くまの人形、うさぎの人形、ねこの人形は人でないかぎり、人形とは言わないのであろうか?
自分の身近な言葉を使って書いている。自分の体験を例に「人形」の言葉の意味を考えているのがいい。そこから、疑問を見つけているのがとてもいい。
読み聞かせの時、「他の国語辞典でも調べてみよう」と伝えた。
次の日である。
同じ、I子の作文である。
人形(6月25日)
今回はまた人形という言葉をちがう国語辞典で調べてみた。
『にんぎょう【人形】(名)人の形ににせて作ったおもちゃ』(角川国語辞典)
やはり、人の形をしていないと「人形」とは言わないらしい。
だとしたら、おきもののくまの人形があったとしたら、
「ガラスで作られたくまの形をしたもの」
ということになる。
でも、私たちはふつうに、
「くまの人形だ!」
とか言うし、お店にも「くまの人形」と書いてある。
でも、くまはいちおう2本ずつ手と足があるから、人の形の部分は入っていると思う。
それでは、鳥や魚などでは人形とは言わない、ということになる。
疑問が深まっていく様子が目に見えてくる。国語辞典の定義から自分の考えを発展させているのがよく分かる。「あきらめずにがんばれ」とはげました。
三日目である。
はずかしそうに自学ノートを出しに来たI子である。
人形(6月26日)
『にんぎょう【人形】土・木・紙・布・プラスチックなどで、人や動物などの形ににせて作ったもの』(三省堂例解新国語辞典)
私の疑問がやっととけた。
でも、なぜ、書いてあるのと、書いてないものがあるのだろう?
私はやはり
「人形」
と書くのだから、はじめは人の形をしたものがそうだったんじゃないかと思う。
でも、今はふつうに、
「あ、くまの人形だ〜」
とか使っている。
だから、
昔・・・人形とは人の形をまねして作ったもの。
今・・・人や動物をまねて作ったもの。
と言うようになったのではないかと思う。
自分の疑問が解ける。三冊目の国語辞典である。ここでも、自分の予想を書き、考えを深めていく様子がよく分かる。
国語辞典に興味を持ったことを感じさせる作文である。
三日間続けてみると、子ども達一人ひとりに個性的な作文が現れた。このように一つの言葉に対して追究する子の他、「調べる言葉にテーマを持つ子(動物、機械など男の子に多い)」、「調べた言葉から思い出した体験を面白く書く子」、どの子も自分の選んだ言葉に対して楽しく書いている様子が読みとれた。