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2005年08月27日

小林秀雄作品集ーモーツァルト

[読書のことなど]


小林秀雄全作品〈15〉モオツァルト" (小林 秀雄)

僕の二十歳前後の生活は皆さんにとっては信じられない事ばかりだと思います。
高校を卒業すると新宿の予備校に1回だけ行き、それ以降は、朝家をでると10時を過ぎるのをまって、新宿の三省堂でぶらぶらしていたことを思い出します。
その時、店内にかかっていた曲がたぶんモーツアルトのセレナーデでした。音楽にはあまり詳しくはないのですが、モーツァルトを聴くと今でもそのときのことを思い出します。

小林秀雄にはそのころに出会いました。もっとも、それは直接的ではなく、間接的にです。
というのは、この人の作品を読む前に、高見沢順子の「兄小林秀雄との対話」(講談社現代新書・現在絶版)を玉川学園の購買部(nimbusさんはご存じでしょう)で買い、それから小林秀雄の一連の作品を読むようになったのです。(この高見沢順子には後日不思議な縁でお会いすることになりました。)
ところで、この玉川学園の購買部とは面白いところで、何も玉川学園の学生だけが買えるというのではなく、一般の人も利用できます。その当時は(いまでも)まったく商売気がなく、岩波文庫がほとんどそろっており、例のパラフィン紙が茶色く焼けている、古本屋に並べていてもおかしくない本までおいてありました。そのころは少しは本のことを知っていましたので、ある岩波文庫をここで買い、後日、古本屋で同じ本を見かけたらその古本屋にある方が高かったという思い出があります。
ここで紹介した、"小林秀雄全作品〈15〉モオツァルト" (小林 秀雄)は、戦後はじめての小林秀雄が書いた代表作のうちの一つです。この本を読んでから僕はすっかりモーツァルトをよく聞くようになりました。というか、この本が僕のクラッシク音楽入門の本となったのです。
この小林秀雄の「モーツァルト」は今の音楽評論からするとかなり間違ったモーツァルト像を伝えていると批判されています。でも、この戦後間もない時代に「僅かばかりのレコオドに僅かばかりのスコア、それに、決して正確な音を出したがらぬ古びた蓄音機」でこの作品を書いた小林秀雄はやはり文学界の巨人だと今でも思います。 僕は第4次小林秀雄全集を持っているのですが、ここに紹介した第6次小林秀雄全集「小林秀雄全作品」は新潮社から現在刊行中です。この作品集は新字・新かなで脚注も整っています。今回改めてこの脚注読みたさにあらためて購入してしまいました。

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