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2006年04月01日

読書感想文を書こう

[作文教室, 小学生の作文教室]

 これから読書感想文の書き方を説明します。読書感想文と聞いたら、「たいへんだな」と感じる人がいると思います。でも、国語の授業でやったことと、このプリントをしっかり読んで挑戦してください。きっとうまく書けます。次の順番で書いていきます。

 1.本の見つけ方・・・図書目録を使う。
 2.読後感想文を書く・・・読書メモの取り方。
 3.読書感想文の構成・・・自分の体験を書く。
 4.読書感想文を書く(1)・・・手順
 5.読書感想文を書く(2)・・・表現手法
 6.読書感想文の書く(3)・・・テーマからはずれない

■本の見つけ方

 おおざっぱに言って、みなさんの本の選び方は次の二通りでしょう。

 1)本屋さんでみつける。2)図書館でみつける。

 今回、みなさんに紹介したのは3つ目の方法として、出版社の「図書目録」を使うです。図書目録とは、その出版社が発行している本を全て集めて、簡単な内容の紹介をしている本です。

 授業では、 (1)目次 (2)書名索引 (3)人名索引

の使い方を学習しました。これらの使い方に慣れるといいです。


 でもあまり固く考えないで、ただ、パラパラとページをめくって、「いい本ないかな」と探してみてください。きっと自分が読みたいなと思う本が見つかるはずです。

 さて、図書目録は、その出版社ごとに出ています。本屋さんに行ったときお店の人にたずねて、いろいろな児童書の図書目録を集めてみるといいですね。たくさん集めて、どれもカタログのようにパラパラとめくってながめてみる。これだけでも楽しいひとときとなることまちがいなしです。


 また、夏休みすいせん図書のように、みんなにこんな本を読んでもらいたいとして作ったブックリストもあります。夏休み前に図書館から手紙が配られます。何を読んだらいいのかわからない人はこういうものを利用してもいいでしょう。


 目録などで、読みたいなと思う本を見つけたら、ノートに書き出して、自分だけのブックリストを作ってみましょう。ブックリストとは、自分が読みたいと思っている本をリストにしたものです。図書目録や、その他のものから自分が読みたいなと思った本をかたっぱしからリストに加えていきます。そして、リストには、「書名・著者名・出版社名・発行年月日」を必ず書き込みます。この4つは本の住所だと思ってください。この4つがあれば必ずその本を見つけることができるのです。


 さて、自分が読みたいと思って作ったブックリストができたらそれを持って図書館や本屋さんに行きましょう。そのリストにある本を実際に手に取ってみるといいです。むずかしく考えるのではなく、自分の興味がある本、あらすじをみて、「あ、これおもしろそうだな」と思った本をかたっぱしから読んでいくのがいいです。


 このようにして、3冊、読書感想文用に本を選びましょう。


■読後感想文を書く

 読書感想文ではありません。読「後」感想文です。どういう意味かというと、本を読み終わったら、かんたんに記録を書いておこうという感じのものです。やり方は次の通りです。

 1)本を読んでいる時は必ずそばに「赤鉛筆」か「ポストイット」を置いておく。

 2)読んでいる途中「あっ、これいいな」と感じた文章に赤線を引く。(自分の本ではないときには、ポストイットをはる。)

 3)その本を読み終わったら以下の書式で読後感想文を書く。


 ・・・作「 書 名 」(出 版 社 名)を読んだ。

 とても、感動した。

 なぜかというと、次の( )つの文章を見つけたからだ。

 1)「感動した文章を書きぬく(引用する)」と書いてあった。

  私はこの文章を読んで、・・・。 (なんで感動したか、かんたんな説明をする。)

 2)

 3)


 1文目の「・・・作「 書 名 」(出 版 社 名)を読んだ。」は正確に書いてください。

 2文目の「とても、感動した。」はこの文通りでなくてもいいです。「おもしろかった」「かなしかった」「興味深かった」などいろいろとその本を読んだ時に感じたことを一言で表せばいいです。

 3文目は読んでいる途中、自分で赤線を引いたところ、ポストイットでしるしをつけたところの文章を正確に書きぬきます。この作業のことを「引用する」と言います。

 引用が正確に書けたら、次に何でその文章を引用したのか、そのかんたんな説明を書きます。そんなに長く書く必要はありません。また、もし、多くの場所に線を引いたとします。その場合はその線を引いた場所の中でどれが一番大切なことなのかを自分で考え、3つ選んでください。そしてその3つについて書くようにしましょう。選ぶポイントはその本のテーマ(主題)に関係しているかどうかです。

 以下、かんたんな読後感想文の書き方例を書いておきます。

 黒柳徹子作「窓ぎわのトットちゃん」(講談社文庫)を読んだ。←(本の住所を書く)
 とても感動した。
 なぜかというと、次の1つの文章を見つけたからだ。
 「おわったらもどしておけよ」と書いてあった。←(引用する)
 トットちゃんは学校のくみ取り式のトイレに大切なお財布を落としてしまった。それを取るために、トイレのふたをあけ、ひしゃくで探し始める。トイレの中身をかき出しては財布をさがすのだ。←(簡単な場面説明)
 そこに校長先生が現れる。でも、校長先生はおこらない。一言、「おわったらもどしておけよ」と言うだけだった。
 もし、ふつうの先生だったらどうだろう。絶対に、「なにやってんだ」「なにを考えているんだ」とおこるにちがいない。でも、この校長先生はトットちゃんのことを信じてくれているのだ。トットちゃんはこの時から、校長先生を「心から信頼できる人」だと思った。
←(自分の体験と比べてみる。「もし〜だったら」がキーワード)

■読書感想文の構成・・・自分の体験を書く。
 読書感想文の構成を、みなさんは知っていますか。みなさんは、ふだんどのような構成を使っているのでしょうか。
 よくある構成として、
 (1)本との出会い (2)本のあらすじ (3)もし私が主人公だったら
という構成です。でも、この構成を使ったら、多くの人たちが、(2)の本のあらすじをたくさん書いてしまい、読書感想文が、本の紹介文となってしまいます。毎年、このような読書感想文を多く見かけます。
 読書感想文は「自分の成長物語」です。成長物語というのは、5年生のはじめに勉強した「5月の朝・・」と同じです。
主人公のはじめの気持ち→ある事件との出会い→主人公の成長
 つまり、
 本を読む前の自分→本を読む(事件)→読後の自分の成長
を書くのです。
 では、この成長物語を書くためには、どのような、文章構成をすればいいのでしょうか。自分の成長を書くわけですから、読書感想文を書くためには、自分の体験を書かなくてはなりません。
 読書感想文をうまく書くには、上手な読書感想文を読むのが一番いいです。次の読書感想文で考えてみましょう。

 「コカリナの海」を読んで
           3年生
 私には宝物があります。それは、土でできた小さな笛、オカリナです。その笛には、かわいい動物の絵が描いてあり、そおっと吹いてみると、それはそれはあたたかい音がするのです。
 主人公のゆいもひとつ笛を持っています。
 その笛はコカリナという木でできた笛です。
 このコカリナのお母さんはイタヤカエデという大きな木で、長野オリンピックのために道路を広げるとき、切られてしまった木なのです。
 私はおととしの夏、白馬の方へ旅行に行ったときのことを思い出しました。
 ホテルや町のおみやげやさんはどこでも『長野オリンピックまであと○日』という旗を立てており、おおにぎわいでした。
 山を見ると、ところどころ、まったく木がないところがありました。
 バスガイドさんの話では、スキー場を広くしたり、ジャンプ場の整備をしているということでした。
 確かに、冬の白馬の景色は白一色で、それはそれは、すてきな風景でしょう。
 でも、どうでしょう。
 夏に来てみ白馬の山々は、まるで「助けて、いたいよ!」と私に言っているように思えたのです。
 私は何だか、胸がとても痛くなるような気がしたのを思い出しました。
 オリンピックは平和のお祭りといいますが、そのかわりに死んでいった、たくさんの木や動物たちがいるということを、この本は思い出させてくれたのです。
 ゆいや、ゆいの仲間たちはきっと、そんな思いをコカリナにこめてふいているのでしょう。
 だから、ゆいのふくコカリナの音が、心の病気になってしまったしょうくんのおじいさんの心のとびらをあけることができたのだと思います。
 夏休みなどに、自然にふれあう場所に行くと、本当に心のそこから、「ふうっ」と大きなため息が出てしまいます。
 それは、ふだんは感じられない自然のすばらしさを体が知っていて、「やっと、帰ってこられたんだなぁ」と言っているからにちがいありません。
 そして、何だか心の中が、うきうきして、心も体も、元気いっぱいになってくるからふしぎです。
 私のオカリナは、まだそんなに、うまくないけれど、目をつぶってふいてみると、そんな自然の中に、今自分がいるように思えるのは、ゆいと同じかなぁと、かってに思う私なのです。

 いいところが、たくさん見つかる、読書感想文です。特に、自分の体験を本のテーマからはずれずに、本の内容と比べているところがすばらしいです。
 では、どうしたらこのような読書感想文を書けるのでしょうか。
 読書感想文にはいろいろな文章構成があります。今年の夏休みの読書感想文では自分の体験をうまく取り入れる、次のような文章構成で書いてみてください。
 読書感想文の構成           
 1)本を読む前の自分の体験(思い、考え)
 2)その本との出会い ←1)、2)で10行
 3)その本の簡単なあらすじ ←8行
 4)心に残った場面(引用)
 5)似たような自分の体験(本と自分を比べる)←4)、5)で20行
 6)考える(作者の考えやテーマについて考える)←10行
 7)まとめ(自分がこの本を読んでどう変わったか。)←5行

 この構成は、読書感想文を作文用紙3枚で書くつもりで作ってみました。カッコの中の数字は、作文用紙の行数だと思ってください。もちろん、大まかな目安ですのでこの数字通りの行数でなくてはいけないということはありません。
 もちろん、この書き方がベストと言うわけではありません。他の書き方でいいものがあったらそれで書いてもいいです。(読書感想文の書き方の本もたくさん出ていますので、それらの本を参考にしてもいいでしょう。おすすめの本は宮川俊彦作「これできみも読書感想文の名人だ」(三省堂)です。いろいろな構成や本の読み方を紹介していますので、書店で手にとって見てみてください。)

■読書感想文を書く(1)・・・手順
 では、今までのことをまとめて、実際に読書感想文を書く作業について説明しましょう。手順は以下の通りです。

 ブックリストを作る 
 1.図書目録を使ってブックリストを作る。
 2.その中から図書館や書店に行き、本を選ぶ。(3冊以上)
 3.かたっぱしから本を読む。
 読後感想文を書く 
 4.一冊読み終えたごとに、「読後感想文」を書く(書き方の例参照)。
 5.読後感想文の中から、「一番いいな」「一番書きやすいな」と思われるものを選び、本を決める。
 6.選んだ本をもう一度読む。(本のテーマを考えながら読む。)
 7.新しく線を引いたときは、それについてまた読後感想文を書く。
 読書感想文を書く 
 8.書いた読後感想文を読み直し、読書感想文に使えそうなものを選ぶ。
 9.テーマと関係した自分の体験を考える。
10.読後感想文を使い、読書感想文の構成を考える。

■読書感想文を書く(2)・・・表現手法
 今まで読書感想文で、どういう順番で書けばいいかを説明しました。次に考えるのは、どんな書き方をすればいいかです。
 いままで、生活作文や日記を書くときに次の4つの表現の教えました。おぼえていますか。例文をかんたんにあげておきました。さんこうにしてください。
                                

 1.オノマトペ(ニャンニャン言葉)
 例:はらはらしました。しくしく泣いてしまいました。たたくとカチカチと音がしました。そろそろと歩きました。目がくりくりしている。

 2.会話文(カギかっこ)
 例:「チンドン屋さ〜ん」と、トットちゃんは元気よくさけんだ。
「だいじょうぶ。」と、心配そうに声をかけてくれた。

 3.体言止め(名詞止め)
 例:この本との出会い。それが私にとって、重大な出来事だった。
 そのことから、とても落ち込んでしまった私。

 4.比喩(ひゆ)たとえ
 例:まるで「助けて、いたいよ!」と私に言っているように思えたのです。
 先生の外国の話は、海のむこうの子供たちが、友達のように思えるときもあった。


 これら、4つの表現のしかたを読書感想文に取り入れ、文章を書いていくようにするといいです。
 1から3は特に自分の体験を書くときに使えるはずです。また、4の比喩(たとえ)は本と自分とを比べるときに使えそうです。気をつけることは、あまり使いすぎないことです。ここぞというときにピシャッと使うのがいいです。

■読書感想文を書く(3)・・・テーマからはずれない
 最後に、次の感想文を使って、書き方を考えましょう。

 「窓ぎわのトットちゃん」を読んで
                       5年
(1)私は、1年生のころ、落ち着きがなくて、よく先生におこられていました。
(2)この本の中にも、トットちゃんという1年生の女の子がいます。トットちゃんは、本当はいい子なのに、なぜか一年生で学校を3回もかえています。でも、トットちゃんの場合、”転校”ではなくて”退学”なのです。
(3)私は、5年生だけど、退学にはなったことがありません。と、言うとより1年生で学校を退学されるのは、とてもおかしな話です。私が1年生のころ、まだ学校に慣れていないせいか、うずうずして立ち歩いたりしていました。もちろん、先生には注意されたけど、退学にまではいきませんでした。
(4)トットちゃんは、授業中に、たって窓の所へと行きます。そこで、静かにしていてくれるのなら、立っていてもいい、と先生が思ったやさきに、トットちゃんは大きな声で、
「チンドン屋さぁーん!」
と言って、チンドン屋さんをおびきよせるのです。それでトットちゃんは授業妨害をして、先生を困らせてしまいます。そのことで、もう、トットちゃんはどんどん、退学につながる道に行ってしまったということなのです。
(5)でも、トットちゃんは、いつもテストの点数がいいのです。通信ぼも、国語も算数もリトミックも全部「とても良い」です。ただ、授業中の態度だけはいつも、「がんばりましょう」なのです。
(6)私は、ずっと前、悲しかったことがあります。そてもかわいがっていたハムスターのサクラが死んでしまったのです。トットちゃんも、第二次世界大戦が終わるまでの間、おばさんといっしょに鎌倉で過ごしていました。やっと戦争が終わり、トットちゃんは家に帰りました。まず、トットちゃんの一番の友達の犬のロッキーを探しました。でも、家中ひっかき回してみても、ロッキーはいません。だんだんトットちゃんの目になみだがうかびました。
「ロッキー!ロッキー!いないの?」
とさけびます。そう、ロッキーは死んでしまったのです。
(7)この話を読んで、のどが熱くなって、私は泣いてしまいました。トットちゃんは、私の時の気持ちではなく、孤独感のあふれる泣き方をしたにちがいありません。だって、トットちゃんとロッキーは、永遠にはなれられない、最高の友達だからです。そして、この本と私の出会いも、きっと、トットちゃんとロッキーが初めて会った時と、同じような気持ちでいっぱいです。

 前に読んだ本を思い出しながら、自学ノートに感想文を書いてくれたものです。さすがです。文章一つひとつがしっかりしていて、とても書き慣れていると思います。(1から7までの段落の数字は先生がつけました。)
 ここでは、みなさんはこの作文の文章構成を読んでください。そのために、この読書感想文の内容を段落ごとにかんたんに整理してみます。
 (1)自分の体験(1年生のころ落ち着きがなく先生におこられた。)
 (2)トットちゃんは1年生で3回も退学。
 (3)私は退学にならない。
 (4)トットちゃんの退学の理由。
 (5)でもトットちゃんは頭がいい。
 (6)自分のハムスターの死の例とロッキー(犬)とを比べる。
 (7)トットちゃんとロッキーの関係と、私とこの本との出会いを比べてまとめる。
 どうでしょうか。1〜5までと6〜7はどう関係してくるのでしょう。はっきり言って関係ありませんね。関係のないことを書いてはだめです。何が何だかよくわからなくなってしまいます。せっかく1〜5までを書いたのだから、それを発展して書いてもらいたかったと思います。つまり、なんでトットちゃんはトモエ学園では、退学にならなかったのでしょうか。この本のテーマはそこにあったのではないのでしょうか。「自分の体験と、主人公を比べて書く」というのは、本の中からただ自分の都合のいいように取り上げて書いてはだめです。その本の持っているテーマ(主題)から目をはなさないように読むようにすることが大切です。
 みなさんは、読後感想文のメモを持っています。そのメモから、本のテーマに照らし合わせて、一番マッチしているメモを選び出します。それをもとに読書感想文を書くようにしましょう。多くのことを書いてはいけません。一つのことにしぼって書くのがいいのです。(2000年7月学級通信増刊号より)

■参考文献
宮川俊彦作「これできみも読書感想文の名人だ」(三省堂)
上條晴夫著「読書指導50のコツ」(学事出版)