国語辞典作文
国語辞典に親しませたいと考えた。
休み時間に図書室から国語辞典を用意することを伝えておく。
『国語辞典を使って、作文を書きます』
四百字作文用紙を配り、やり方を説明する。
『二行目に今日の日付と名前を書きます』
『国語辞典を開きます。ぱらぱらとめくりながら国語辞典を読みます。読みながら「これいいな」と思った言葉を一つ決めます。コツは自分の知っている言葉を選ぶことです』
言葉を選ぶ時間を三分とる。すぐに決める子もいれば、なかなか決められない子もいる。
三分も経つと全員が言葉を選ぶことができた。
『次に作文用紙のタイトルを書きます。一行目に今、自分たちが決めた言葉をタイトルにします』
全員がタイトルを書いたことを確認し、次の指示を出す。
三行目に、自分たちが選んだ言葉の定義を写します。(1)(2)のように意味がたくさんある場合は、自分が「これがいいな」と思うものを写します」
黒板に、例として、
『ねむる【眠る】(動)(1)目をつむり、心や体がしぜんに活動をやめて、休んだ状態になる(対)覚める。』(例解小学国語辞典)
と書く。
そのままを視写すればいいのだが、混乱した。記号と言葉を同じマス目に書くもの、定義の文のふりがなの扱い、そのまま写すことへの抵抗など。
今までにこういう経験がなかったのか、分からない児童には個別指導で対応した。
特に、最後の出典を書き落とす子が多かったので、この点は最後に取り上げて全員が書いてあるか隣同士で確認させた。
みなさんが、これいいなと思った言葉をもう一度読みます。
その言葉の意味を読んで、気がついたこと、考えたこと、思い出したことなどを、次の行から書きます。
みんな、「え〜」とは言うものの、すぐに書き始めた。
授業後、作文用紙を回収し読む。
大きくわけて、次の三つのパターンが読み取れた。
(1)その言葉から思い出したエピソードを書いているもの。
(2)その言葉の意味は知っていたが、他の意味を発見したことを書いているもの。
(3)その言葉の意味と、自分が使っていた意味にズレがあったことを書いているもの。
一つずつ紹介する。
ぶざま 『ぶざま【無様・不様】かっこうの悪い様子。みっともない様子。』(くもんの学習国語辞典)
自分はこの言葉を、相手が何かミスをした時に言っていました。
ぶざまといえば、とあるアニメで、
「君はぶざまだね。」
と言っていました。
そのあとから。姉がよく私がころんだりした時に、 「ぶざま!」 と笑うのです。姉はつまり、私の事を『みっともない』と言っているのです。私はちょっと「ムッ!」となりますが、姉はちゃんとぶざまの意味を知っていたので、ちょっとは見直しました。
Aさんはこういう作文は大得意です。エピソードの切り取り方がバツグンにうまいです。ユーモアを感じさせる文章になっています。
すいしょう 『すいしょう【水晶】(名)六角柱の形に結晶したとうめいな石英。印材・光学機器などに使う。クリスタル。』(学研現代標準国語辞典)
ぼくはいままで水晶は石英だということは知っていたけれど、とうめいじゃないと水晶じゃないと書いてあるのにびっくりしました。
他に、印材と書いてあるのにびっくりしました。 印材ということは、水晶の印かんがあるということになります。
あと光学機器というと、いろいろな機器に水晶が入っているということです。
水晶って便利だなあと思います。
辞典の定義の言葉に反応しているのがいいです。「印材」という言葉から、自分の予想「印材ということは、水晶の印かんがあるということになります」が書けているのがとても良いです。
ごはん 『ごはん【御飯】(名)「めし」「食事」のていねいな言い方。』(例解小学国語辞典) 食事っていうのはていないな言い方ではないのだろうか。 自分にとってごはんとは、お米をたいたものということで使っていた。 私はよくお母さんに、 「ごはんをよそって。」 といわれる。 私は決まっておかまからしゃもじでお米をおちゃわんによそう。 そのとき、いつもごはんというのは、お米のことをさしていた。 でも、パンが食事にでてもごはん。ピザが食事にでても、ごはん。 だから、一日の食事に出る物(パン、ピザなど)は全部ごはんということになる。
ふだん何気なく使っている言葉でも、こうしてきちんと辞典で調べてみるとおもしろいことに気がつきます。典型的な辞典作文になりました。「ごはん」と「お米」との微妙な言葉のズレがとても面白いです。
いろいろ可能性を考えさせる作文である。
コメント
あべたかさんのHPに追試した報告が掲載されていました。
http://www.abetaka.jp/kyoka/roku/roku42.html
Posted by: いけち | 2006年05月04日 15:07