まんがでえんぴつ対談
●授業のへそ
子どもたちはマンガが大好きである。この授業では、その大好きなまんがを鉛筆対談を通して、文章を書き慣れることを促すことを目的とした。(4年生)
●授業のながれ
帰りの会の時、次のように連絡を言う。
『明日授業でまんがを使いますから、お家から一冊、自分が好きなまんがを一冊持ってきてください』
こう言っただけで子どもたちは大騒ぎである。「どんなまんがでもいいんですか」との質問に、『あまり荷物にならないように、コミックに限りましょう』と答えた。
次の日の国語の時間である。
今日はまんがをみんなで読んでもらいます。これから十分間みんなが持ってきたまんがを読みます。
『となり同士で一冊のまんがを読みます。二冊あるグループはどちら読むまんがを決めてください』
『では、十分間読んでください』
教室はシーンと静まり返る。みんな一言も口を聞かずに真剣に読んでいる。
時々、笑い声が聞こえてくる。
教師が作文用紙の用意をしているのを見ていた女の子が、「感想文を書くのかな」といやそうな声を出していた。
『十分たちました。読むのをやめてください』
これから、みんなが読んだまんがについて「鉛筆対談」をしてもらいます。
鉛筆対談は、以前にもやったことがあるが、一応やり方を確認をした。
鉛筆でするおしゃべりです。
き 「 」
い 「 」
と書いていきます。
はじめの人は「このマンガおもしろいね」ではじめます。
鉛筆対談と聞いて、子どもたちはまた喜んだ。「感想文」と言った子もうれしそうな表情をしている。
二人に一枚四百字詰めの作文用紙を配る。
題名を「まんがで鉛筆対談」とし、二行目にお互いの名前を書かせた。三行目から対談の始まりを書くことを説明した。
『では、これから十分取りますので、鉛筆対談をはじめてください』
教室はまた静まり返る。鉛筆の音だけが聞こえてくる。
五分がたち、二枚目を取りに来るグループが出始めてきた。
十分が経とうとしたとき、どのグループも終っていなかったので、『あと三分延長します。まとめてください』と指示をした。
『では、時間です。やめてください』
『残りの時間で発表会をします』
全員にしてもらいたかったが時間が足りないので三組の発表になった。
手を挙げたグループを指名し、前に出てもらう。教師はその子たち後ろに立ち、発表をしてもらった。
次の対談はその中の一組のものである。
「ちびまる子ちゃん」私が好きな歌 集英社刊
(さ)さや (ま)まな
ま ねぇ、このまんがおもしろいね。
さ うんうん。でも、一番最初におもしろいのって、表紙かなぁ。
ま そう?私は表紙でかったりするけどあんがいなかみの方がおもしろい場合
もあるよ。
さ まるちゃんってしぶいでしょ。だから、しぶいお茶すきなのかなぁ〜。
私は、ち〜としぶめのお茶がすきだな。
ま 私、まるちゃんはいっけんしぶいけど陽気な方だと思う。お茶はいつもい
れてるけど、私はうすい方がすきだな。
さ でも、うすすぎても、ちょっと・・・。
私、思ったんだけど、まるちゃんが好きな歌のかえ歌って、さくらもも子
さんが作った曲なのかな〜。
ま 本当にあるじゃん。だって、自分で作るひまがあるならマンガの原こう早
く終わらせたいと思うだろうし、げんにあとがきってゆ〜か、そういう所
で”もうダメ”って言ってんじゃん。
考えてんならやっぱ絵だよ、絵。
さ 話かわるけど、私、さっき見たんだけど、はまじたちのバンドって売れそ
うもないような感じしない。だったら、大野くんたちのバンドの方がいい
かもってか!
ま そう?なんか売れないバンドっていうより私はバンドしながらお笑いやっ
てスターになるってかんじだけどなぁ。
さ でもさ〜、まるちゃんマンガっておもしろいのと、ち〜とした感動が入っ
てるからいいと思うな。
ま そうだね。サヤ、さくらもも子さんあてにそのままファンレター書け
ば・・・?
さ じゃぁ、いっしょに書いてよネ〜!!
ま うん、じゃ、そうしよう。
とりとめのない会話の中にもお互いが自分の考えを述べているえんぴつ対談になっている。
お茶のところではみんなからの笑いがたえなかった。四年生でお茶の渋さを話題にしているのがおもしろい。
最後はお互いにファンレターを書くことで、うまくまとめているのがとてもいい。
授業の終わりに授業感想を書いてもらった。五段階評価で全員が五を付けた。
主な理由は、
・まんがについて語り合えたのが良かった。
・鉛筆対談がおもしろかった。
・授業中にまんがが読めるなってサイコー。
などがあげられた。
●伝言板
鉛筆対談の実践は「よい文の書き方」佐藤茂・柳内達雄著(昭和二十七年・牧書店刊)に読書感想の実践が掲載されている。本を読みその感想を鉛筆対談で行うというものである。今回は、まんがを使って鉛筆対談をした。