俳句作文
■指導法
俳句作文とは、俳句を読んで、その作者になったつもりで、その俳句を作った時を想像して書く作文です。
次のように授業をしました。
『今日は俳句作文をします。』
と告げ、教科書(学校図書)から選んだ以下の三つの句を黒板に書きます。
・夕立があがりまた街動き出す
・ひがん花だけがもえてる長い雨
・残されてひとりの教室きくにおう
『この三つの句の中から一句選びます』
その句を作った作者になったつもりになって、その俳句が作られた時の様子を想像して作文を書きます。
質問が一つ出ました。
「自分でお話を作っていいんですか」
『はい、そうです。俳句から想像して、自分でお話をつくってください』
作文用紙を一枚(四百字)配り、書き始めます。
■子どもの作文
「夕立があがりまた街動き出す」
今日、街へ散歩に行くと、空からこつぶの夕立が降ってきました。
かさを持っていない私は、街のレストランの前で雨宿りをしました。
「どうせ、夕立だからすぐやむな」
と思っていました。
ふと、街をみると、雨にぬれて急いで帰っていく人たちや、店に入って雨宿りをする人たちの姿が多く見られます。
しばらくたつと、街は、何だかどことなくさみしいふんい気をただよわせています。いつもにぎやかな街も、今は静かです。
数十分後、夕立があがりました。
太陽も顔を出してきました。
今まで雨宿りをしていた人たちも店から出てきます。
また、街に活気がもどってきました。(六年女子)
「ひがん花だけがもえてる長い雨」
あー、今日は雨。天気予報によると一日中雨らしい。
「外で遊びたかったのに」 と思いつつ、部屋でテレビを見ながら寝転がっていた。
と、そこに、声が聞こえてきた。
「おつかいに行って来て」 お母さんの声だ。
いやいやながらも、おつかいに出かけた。
途中、スーパーに向かう前にお寺がある。そこに、雨にぬれたひがん花が咲いているのに気がついた。
こんなに私は雨でどんよりした気持ちなのに、そのひがん花だけは、まるで燃えているように赤くきれいに咲いている。
おつかいから帰ってきた私は、何だか今までのどんよりした気持ちを忘れてしまったように、宿題に取りかかるのであった。(六年女子)
「残されてひとりの教室きくにおう」
今は放課後。私は花係で、教室の花一つひとつに水をやらなくてはいけない。今は、昨日私と同じ花係の子が持ってきてくれた、きくの花がいっぱいある。
「じゃあねー」
「ごめ〜ん、もう帰るね」 友達が次々と教室から出ていく。ついに、私とそうじが終わった男の子しかいなくなってしまった。
すると、その男の子もそそくさと帰ってしまった。もう、教室にいるのは、私ときくの花だけ。取り残された気になり、さびしくて泣きそうになった。すると、いつもはあまりにおいのしないきくが、ふんわりといい香りをさせている。まるで、私をなぐさめるようににおいだしたそのきくは、なぜだかすごくやさしい気分に私をさせてくれるのだ。
そして、仕事を終えた私もその教室を出た。だれもいない教室とやさしいきくのにおいを残して。(六年女子)
■参考文献
青木幹勇著「俳句を読む、俳句を作る」(太郎次郎社1992年)
「俳句を散文にしてみる」の小見出しがついています。この実践の概略を引用すると、「(俳句を散文にしてみるとは)読み手の子どもが仮に作者になって、句の理解を散文に書かせてみる形なのです。教師がくどくどと句の説明をしたり、小刻みな発問をして、子どもたちを引きまわすことをしないで、このような短文を書いて参考にさせます。子どもたちは、これを手引きにして、各自に教材文の一句か二句を選び、短い散文に書きかえるのです。」と書いてあります。
今回の授業はこれをもとに授業を作りました。