会話文を考える ー友だちの作文を読んでー
■ 友だちの作文を読む
「母の日の作文」(構成を教えるー母の日の作文ー)を使って授業をした。
作文の書き方は上記のリンクをたどってもらいたい。
児童の作文を再掲する。
ちょっとかわいいお母さん
私のお母さんは、おっちょこちょいでもあるし、すごいところもあるし、もちろん、感謝することもある、とってもすてきなお母さんです。
この前、私のお母さんは、ちょっとおっちょこちょいをした。それもいつもよくするものだ。
デパートで、お母さんと私が買い物をしていたら、よその子が、
「お母さ〜ん!」
と言って、自分のお母さんをさがしているのに、私のお母さんは、
「な〜に?こっちよ〜!」
と言ってしまった。
私はとっさに、
「S子は、ここにいるじゃん」と言った。
お母さんは「へ?」というように私の顔を見た。
私とお母さんは、二人で笑った。
なぜか、その時、とても気持ちがよかった。 私は「お母さんにも、こんな、かわいいところもあるんだな」と思った。
でも、私のお母さんは、おっちょこちょいばかりしているわけではない。
すごいところだって、もちろんある。
私のお母さんの料理は最高だ。
私の一日の夜の楽しみはもちろん夕食だ。
「ごはんよ〜!」
その声を聞くと、私は、一目散に飛んでいく。
「今日のごはんは何かな?」
うきうきしながらリビングへ行く。
「あ、今日は、カレーだ!」
おいしすぎて、おかわりをしないと気がすまない。
うちの家族は、みんなお母さんの料理が大好きである。
お父さんなんかは、「世界一」などと言っている。
なかでも特に大好きな料理は、
「あじの開きに、ほかほかごはんに、おみそしる」
私はよくお母さんに、「食べすぎ!」と言われてしまう。
こんなくいしんぼうな私だけれど、お母さんには、とっても感謝している。
私が病気の時は、いつも、私の好きな食べ物を買ってきてくれる。
「S子、何食べたい?ママ、今、買ってきてあげる」
と言って、買ってきてくれる。
「ありがとう」と私はその時思う。
また、かぜの時は、いつもいっしょに寝てくれる。お母さんに「どうして?」と聞くと、「もし、気持ちが悪くなったら、近くにいればすぐわかるでしょ」と、言ってくれた。
私はそんな、お母さんが大好きです。
いつまでも、かわいくて、元気いっぱいのお母さんでいてください。
ワープロで清書した作文をB4の紙に印刷し全員に配る。
教師が一度範読する。
読み終えると、次の指示をした。
『この作文を読んで、「これいいな」と思ったところに赤線を引いてください』
時間を5分とった。
次に線を引いたところを発表してもらう。
子どもたちの多くは、気持ちの表現がうまく書かれているところに線を引いていた。
たとえば、次の文である。
・なぜか、その時、とても気持ちがよかった。
・その声を聞くと、私は、一目散に飛んでいく。
どれも、いいところに気がついたことをほめる。
そして、次の指示を出す。
『先生がいうところを青線を使って引きなさい』
カギカッコに全て線を引きます
引き終えたころを見計らい、全部で15個所あることを確認させる。
『この作文にはカギカッコがたくさん使われています。
よく見ると、これらのカギカッコは3種類の使い方がされています.
どんな種類の使い方があるかを考えてください』
と言い、黒板に1.2.3.と書く。
少し、戸惑った様子であったが、1つ目の会話文はすぐに解答がでる。
たとえば、次の文である。
「な〜に?こっちよ〜!」 と言ってしまった。 私はとっさに、 「S子は、ここにいるじゃん」と言った。 (実際に言った会話をカギカッコでくくる。)
この調子で2つ目もすぐに正解がでた。
自分が心の中で思ったことである。
私は「お母さんにも、こんな、かわいいところもあるんだな」と思った。 (自分が心の中で思ったことをカギカッコでくくる。)
3つ目がなかなか出てこなかったが、この部分のカギカッコの使い方が違うことはすぐにわかったようである。
「あじの開きに、ほかほかごはんに、おみそしる」 (強調表現としてカギカッコでくくる。)
強調表現である。カギカッコを使って、その部分を強めているのである。
以上、カギカッコの3つの使い方を整理し、この作文にはこのように、カギカッコを上手に使っていることを知らせた。カギカッコを使うことで、臨場感や、自分の気持ちなどを表現しているのである。
もちろん、この作文を書いた子がこの表現手法を自覚的に使ってかいたわけではない。今までの作文の経験からこのような表現手法を使ったものであろう。
しかし、この無自覚を自覚的に使うことで、作文が上手になる。なぜならば、表現手法を知ることによって、その手法を意図的に使えるようになるからである。
作文を読むとき、「この作文いいな」と思う。そうしたら、どうしてこの作文がいいなと思ったかを考えるといい。必ず、表現の仕方に工夫があるはずである。(2002年5月20日)