「書けない子をなくす作文指導10のコツ」を読む(最終回)
■文題を指示する
文題とは作文の題であると言っていいだろう。文題を自由に決めさせて書くという書き方も作文教育の中にはあるが、入門期の作文指導では、文題を指定して書かせることが効果的である。上條氏は 『子どもの考えを引き出すような、子どもたちが思わず書いてみたくなるような、文題を工夫する必要がある(p46)』 と述べている。
以下、3つの実践を紹介している。
○「近ごろ変わったこと」
(長岡文雄著「<この子>の拓く学習法(黎明書房)」)
「近ごろ変わったこと」の文題では、作文を書く前に次の2点を 指導したという。
1)変わったことはいくつあるか。指を折れ。
2)材料(ネタ)をどれでいくか。選べ。
この文題で書かせると子どもたちは、グングン書き始めたという。上條氏はその理由を以下のように分析する。
「近ごろ」という取材範囲を限定している。
物事の変化に着目させる文題であること。
また、変化に気がつけば、その理由を書くようになる。
○「おかあさんの音」
(石井重雄著「地域に学ぶ社会科(岩崎書店)」
文題から「音」(オノマトペ)を書くことを指示している。
オノマトペなどと言わなくても、子どもたちは自然にいろいろな音を取材し、作文に書くようになる。
○「おかあさんの言葉」(上條氏オリジナル)
「お母さんの音」に触発されて行った文題である。会話文に限定して書くことを促そうとしたという。
■文題作成のヒント
この章のしめくくりに、文題作成のヒントを3つあげている。
1)一番○○な◇◇◇ (限定する文題)
2)○○と◇◇ (比較する文題)
3)○○のヒミツ(謎、不思議) (発見する文題)
どの文題も、「限定」「比較」「発見」という追究する作文を書く時に必要な書き方である。ただ、私の経験からすると1)と3)
は低学年からも使えるネタであり、2)は高学年向きであると思う。なぜなら、比較を促す文題はそれだけ抽象度が高くなるからである。
子どもたちが意欲的に書く文題を研究して行くことがこれからも私たちが意識的に行っていく必要がある。いつか、子どもたちが意欲的に書く文題集を作ってみたいと思っている。
■「文題を指示」をした作文
「前期の私から後期のあなたへ」という文題を指示して書かせた。3年生の作文である。
書いている今を起点として、過去と未来を書く。自分を客観化して書く文章である。「比較する文題」に近い例だと思う。
ぼくは、前期の君だよ。いまは、あまり頭がよくないと思うけど、後期の君はどうですか。でも、すごく頭がわるいことはないよ。今、前期を振り返ってみると、テストの伝が68点くらいの時もあるし、算数の時間かしらないでど、ねぼけていたときもあったよ。後期のぼくは、ちゃんとそういう時がないようにしてね。
後期のぼくは、勉強ははかどっていると思うけど、まぁ、後期のぼくもがんばってね。
なんとなく、自分で反省しているのがおもしろい。自分を客観化して文章を書くのはちょっと抵抗を示したが、コツをつかむとおもしろがって、どんどん書き進めていった。
■参考文献
上條晴夫著「書けない子をなくす作文指導10のコツ」(学事出版刊1992年)
2003年12月14日(実践!作文研究メールマガジン第201号掲載)