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2006年04月02日

「書けない子をなくす作文指導10のコツ」を読む(4)

[書けない子をなくす「作文指導10のコツ」を読む]

■■■作文指導は「指示」が命だ!「3.規模の指示をする」■■■

 規模の指示とは、端的に言って、書かせる文章の量を指示することである。
 例えば、次の通りである。

 100字で書きなさい。  200字で書きなさい。  作文用紙1枚で書きなさい。

 この規模の指示は当たり前のことかもしれない。しかし、意外とされていない指示である。
 現に、この「規模の指示」の言葉は上條氏の造語である。
 なぜ、この「規模の指示」が必要なのか。以前上條氏は以下のように私に語ってくれた。
 『体育で、校庭を走る時、教師は「3周走りなさい」とか、「今日は、10周走ります」などと、必ず何周走るかの指示をする。ただ「走れ」では、子どもたちは走れない。3周には3周の走り方があるし、10周には10周の走り方がある。作文も同じである。作文用紙1枚の書き方と200字の書き方では書き方が違う(語録)』
 つまり子どもたちはこの指示によって、これからどの程度の量の文章を書くかが分かるので安心して書くことができるのである。
 作文を書く時にこの「規模の指示」をすることで明らかに子どもたちの書きぶりが違ってくる。書くことが苦手なクラスにはこの「規模の指示」をすると効果的である。

■パーツ作文の追試
 上條氏の代表的な作文の授業の追試である(3年生)。

 1.森の学校(3泊4日の移動教室)の作文を書きます。
 2.黒板に示したプロット(旅程)の中から、どれか一つを選んで書きます。
 3.その場所でおきたおもしろかったことを、一つだけ書きます。
 4.一つ書かけたら、黒板のプロットの下に、正の字の一画を書きます。
 5.書けた作文を教卓の上に置き、新しい原稿用紙(二〇〇字)を取って行って、また書きなさい。
 6.時間は二時間です。

 「書けない子をなくす作文指導10のコツ」のp27に載っている「パーツ作文」の実践である。(1.の指示をクラスに合わせて変えただけである)
 以下のような作文がどんどん書かれていく。

 二日目のねる前に、ぼくたち三ぱんはまくらなげをしました。
 まくらなげというのは、上のベットから下にいる人たちにむかって、ふりおとすのです。
 とてもたのしかったのですが、ドスドスという音と、ものすごいほこりがでてやめさせられました。
 ざんねんです。

 ドスドスという音が書かれていて感じがよく分かる。
 短くてもその場の雰囲気が伝わってくる作文である。

 ハイキングの帰り道、ぼくは小鳥の鳴き声を聞いていました。
 その中でも、一番気に入ったのは、
「ピー」
という鳴き声です。
 また聞きたいけれど、もう聞けないのが悲しいです。
 でも聞けてよかったと思います。

 四月当初作文が全く書けなかった児童の作文である。えんぴつを持つだけで固まってしまう感じの子であった。しかし、この時(六月)は、みんなと同じようにこのパーツ作文を何枚も書いていた。
「ピー」という鳴き声を書くことによって、その時のことが思い浮かぶ、いい作文である。
 
■子どもに沿った規模の指示
 上條氏はこの「パーツ作文」を開発する時に「長い作文を書かせる」というような実践を読んだそうだ。その時、自分のクラスの子には難しいと考え、それだったら短い作文でも、いい作文を子どもたちに書かせてみようと考え、このパーツ作文を作ったという。
 そして、この二〇〇字のパーツ作文がヒットしたのである。
 このヒットの理由はおよそ、次の三つであると上條氏は述べる。

A 子どもが少し頑張れると書ける大きさである。
B エピソード(話)一つに合う大きさである。
C ひとかたまりの考えを盛れる大きさである。

 規模を意識することで、子どもたちが達成感を持って書ける作文になっているのである。
 Aでは、子どもたちの現状に合わせた作文の規模を考えている。
 B、Cではその書く内容がその規模に合っているから必然とうまく書けるような規模になっているのである。
 このように、上條氏の作文指導は、いつも教師側からではなく、児童側に立った視点で行われているのである。
 それは、以下の文章からも読み取ることができる。
 『「規模の指示」も、一般的に有効性はあるものの、子どもを見ないで、「さあ、この長さで書け」と、迫ったのでは、原稿用紙3枚のコンクール作文と同じになる。大事なのは、規模の観点から、子どもの状態を把握することである。(p31)』


 2003年6月8日(実践!作文研究メールマガジン第174号掲載