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2006年04月02日

「書けない子をなくす作文指導10のコツ」を読む(2)

[書けない子をなくす「作文指導10のコツ」を読む]

■■■作文指導は「指示」が命だ!「1.書き出しを指示する」■■■
■はじめに
 前回はこの本のまえがき、目次より上條氏の作文に対する考え方を簡単に紹介し考察した。
 今回より、この本の10のコツを一つずつ紹介し、考察しながら、そのコツを使った私の実践を紹介することにする。

■作文指導は「指示」が命だ!「1.書き出しを指示する」

 書き出しを指示するとは、作文を書く時、全員に書き出しの語句もしくは一文ないし二文程度を与え、その後に続けて書くという作文指導である。

 この作文指導の技術は上條氏独自のものではなく、「定石中の定石(p16)」だと氏は述べる(p16)。ちなみに私の手元にある、戸田唯巳著「作文」 明治図書刊(1973)(注1)にも紹介されている。

 さて、この書き出しを与える指導のよい点をまとめると次の2点が考えられる。

1.子どもたちから書く抵抗をとることができる。
2.教師が書き出しの内容を選ぶことで子どもたちの作文の内容をある程度コントロールできる。

 1では、大人でも文章を書くときには書き出しに一番迷う。この書き出しを与えることで、それに続く文章を書けばいいわけであるから、書き慣れない子であってもハードルはぐんと下がるのである。
 書き出しを与えると子どもたちの作文の個性がなくなるという反論があるが、作文指導の初歩の指導の場合まず、子どもたちに気楽に書いてもらうことが第一目的になる。まずは、書き慣れることが大切になる。また、「一つの書き出しの形式に慣れてくると子どもたちは勝手に書きやすい書き方をするようになる」(p14)。
 2では、教師が子どもたちに書かせたい事柄を選択することができるということである。
 たとえば上條氏は(p17)で以下のような書き出し例をあげている。

1.読書感想文の場合
  ・・・という本が楽しかった。
  どの場面かというと・・・
2.社会科見学の場合
  ・・・の工場で○○が一番面白かった。
  どうしてかというと・・・
3.夏休みの後の場合
  今年の夏休みは、百点満点で○点である。
  なぜかというと、・・・

 このように、教師が書き出しの文を工夫することで子どもたちは多様な文章を書くことができるのである。

■書き出しを与えた実践例
 以下、筆者の実践例を紹介する。
 臨場感を感じさせる作文を書く練習をした。運動会を題材とした
生活文の作文である。実践学年は小学校3年生である。

 書き出しに「  」(カギカッコ)を使って書きます。

 書き出しを文ではなく形式を与えた、書き出しを与える指導の応用である。
 以下のような作品ができる。

「いよいよスタートだ」
 目の前にはボールが3つある。
 台風の目のスタートだ。
 1回目のふえでぼうを持った。
 「みんなつめて持ってね。回る時はこまわりだよ」
と私のグループに言ってからスタートした。
 (中略 3年生・女子)

 カギカッコから始めているので緊迫感を感じさせる文章になっている。また、一文が短く書けているのでキビキビした感じになっている。

注1:戸田唯巳著「作文」明治図書刊(1973)P34(3 書き慣れさせる)に次の記述がある。
「それから、書き出しのようなものを与えて、『このあとをつづけよう』ともちかけて、いろいろ思い出させることも、かなりしつこくやってきました。」戸田はここでは、「せなかがかゆい」と黒板に書き、その後を子どもたちに続けて書かせている。

■参考文献
 上條晴夫著「書けない子をなくす作文指導10のコツ」(学事出版刊1992年)
 戸田唯巳著「作文」明治図書刊(1973)

 2003年2月2日(実践!作文研究メールマガジン第156号掲載