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2006年04月02日

「書けない子をなくす作文指導10のコツ」を読む(1)

[書けない子をなくす「作文指導10のコツ」を読む]

■■■新連載を始めるにあたって■■■

 前回まで、「実践!授業感想文」を3回連載で書いてきた。今回からは、上條晴夫氏の著作を中心に、そこから読みとれる作文指導を考えていくことにする。
 「実践!授業感想文」の連載第1回目の冒頭に以下のように私は書いた。

 私は、上條晴夫氏の「見たこと作文」は作文教育の金字塔を建てたと考えている。「見たこと作文」とそれにまつわる指導技術は我々作文教育に携わる教師全員が追試を行う価値がある。

 三回の連載で「授業感想文」の概要を考察してきた。今回は、上條氏の著作を中心に上條氏の作文指導を追試しつつ、上條氏の作文指導をさらに考察して行く。



■上條晴夫氏の略歴

 まずはじめに、「書けない子をなくす作文指導10のコツ作文指導」(学事出版1992年12月20日)である。なぜこの著書にしたかというと、上條氏の小学校教師時代の指導が一番多く影響をしているからと考えたからである。

 上條氏は現在、授業づくりネットワーク代表を始めとし、多くの教育評論活動を行っているが、作文を子どもたちに指導したのは、大学を卒業してから10年間の小学校教師時代である。処女作「見たこと作文でふしぎ発見」(学事出版1990年1月20日)の奥付から簡単に略歴を紹介しておく。

上條 晴夫(かみじょう はるお)
1957年 山梨県生まれ。
山梨大学教育学部卒業
山梨県・上野原町立沢松小学校勤務。


 また、授業づくりネットワーク誌(学事出版)に作文指導をはじめとした論文を掲載しはじめたのは1988年10月号(授業づくりネットワークナンバー4)からである。そして、処女作「見たこと作文でふしぎ発見」(学事出版1990年1月20日)の時点で山梨県・上野原町立沢松小学校勤務と肩書きがあり、続く、「書けない子をなくす作文指導10のコツ作文指導」(学事出版1992年12月20日)の奥付では、「小学校の教師(10年間)を経て、文筆、評論活動にはいる。」とある。
 このように、小学校教師を退職し、初めて書いた本が、この「書けない子をなくす作文指導10のコツ作文指導」であることがわかる。

■まえがきを読む

 作文の指導技術の本である。
 多くの先達から学び、工夫を重ねたコツを書いた。(p3 l2-3)

 これまで、作文指導の本はもちろんあった。しかし、このように指導技術の本であると一文目から名乗っている。今でこそ、作文指導技術と言っても抵抗感は少なくなったが、当時の作文指導はまだまだ教育界では一般に受け入れられてはいなかった。多くの作文指導は、生活作文が中心で、生活の中から心に打つ、書くことに値するものを綴るのが作文であったからである。
 しかし、上條氏は先達の多くの作文指導の本を読み、そこから使える指導技術を抽出しては、追試をして行った。すぐに思い浮かべても、えんぴつ対談(柳内達雄)、三つある式(国分一太郎)、番号作文(福田凱馬)など多くの一流の実践家から学んで行く。 

 生活を綴ること(したこと作文)を基本にした日本の作文教育の流れの中で、前著『見たこと作文でふしぎ発見』(学事出版)で提起した「見たこと作文」の観点から指導技術の見直しを行ってきたからである。(p3 l9-11)

 見たこと作文の価値をここで詳しくは述べないが、従来の作文教育の中心が「生活を綴ること(したこと作文)」であったことに対し、見たこと作文では、「見たこと」を中心に書いていく。そしてそこから「発見を中心に、追究したことを書いていく」作文指導である。(見たこと作文をしよう)を参照。上條氏がこの「見たこと作文」の実践をする中で、培ってきた指導技術をこの著作でまとめたということである。

 書けない子をなくす指導に、本書が少しでも役に立つことを願いたい。(p3 l15)

 この本の書名は「書けない子をなくす作文指導10のコツ」である。「書けない子をなくす」がポイントである。以前、上條氏から「見たこと作文をして、書ける子は書けるが、やっぱり書けない子は書けないと言った先生がいたが、私は書けない子を書けるようにするために、見たこと作文を作った」という話をうかがったことがある。この本は「見たこと作文」というフィールドにその作文指導をどのように展開していくかをまとめた本と言っていいだろう。
 書けない子をなくす作文指導を本気で考えた本である。

■目次を読む
 目次を引用する。

  まえがき
1.作文指導は「指示」が命だ!
  1 書き出しを指示する
  2 ハテナの文を指示する
  3 規模の指示をする
  4 時間の指示をする
  5 文題の指示をする

2.作文指導は「ワザ」が命だ!
  1 書式の指導をする
  2 順序の指導をする
  3 引用の指導をする
  4 キーワードの指導をする
  5 レトリックの指導をする

3.作文指導は「読み」が命だ
  1 生活作文を読む
  2 授業感想文を読む
  3 評論文を読む
  4 見たこと作文を読む

 三部構成で書かれている。
 1は作文を子どもに書かせる時の全体的な指導技術であり、2はその作文の内容に関わる指導技術であると言っていい。
 また3は子どもの作文の読み方の技術を文種によって示したものである。

 次回より、目次に従い、上條氏の実践を追試しつつ、作文指導の技術を学んでいきたい。この目次がこの連載の目次になっていくと考えている。

 2002年10月6日(実践!作文研究メールマガジン第139号掲載

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