【実践・授業感想文2】
------上條晴夫氏の授業感想文を追試する------
前回は、授業感想文の書き方、運用の仕方を中心に紹介した。
今回は、私の実践例をもとに授業感想文を考察していきたい。
■授業感想文はじめの授業
5年生4月当初の国語の授業である。
この日は、ノートの書き方を中心に指導した。
そして、授業の10分前に授業感想文の書き方を説明し、実際に書いてもらった。
黒板に、以下のように書く。
次の書き出しで、感想文を書きなさい。
今日の国語は、○である。
どうしてかというと、・・・・・。
○の中には、1〜5の数字が入ります。時間は、5分です。
以下の4点の説明する。
・今日の授業の感想を書きます。
・○のところには、1から5までの数字を書きます。
・「とってもおもしろかった」が5、「ふつう」が3、「ち〜ともおもしろくなかった」が1です。
・「なぜかというと」の後に自分がつけた5段階評価の理由をたくさん書きます。
説明を終えると、A4のコピー用紙を2つに切った紙を配る。
その紙に、「国語授業感想」「名前」を横書きに書くように指示をする。
ここまで、全員が終わったところを見計らって、「ヨーイ、ドン」で一斉に書かせた。
一気に鉛筆が動くかと思ったが、鉛筆を持ちながら、黒板を眺めている児童が少なからずいる。
一人の子に聞くと「書き出し」の意味が伝わっていないことが分かった。
追加の指示をする。
『全員、黒板の「今日の国語は、」までを書き写します』
『そして、○に数字を書きます』
1から5までの数字の意味ももう一度繰り返し、確認した。
何しろ、4月当初の授業である。書き出しを与える指導は前学年では行っていなかったようだ。
好意的な、作品例をあげる。
今日の授業は5だ。
どうしてかというと、・・・・・
線を書いたり、ページ数を書いたりするのが競争みたいで、とっても楽しかったからです。
またやりたいと思います。
国語のノートの使い方を中心に教えた授業である。ノートにページ数を書かせたことを、「競争みたい」と感じている。短い文章であるが、授業に対して、前向きに考えている気持ちが伝わってくる文章である。
次の作品例は、「理由をたくさん書きなさい」と言った指示に対して反応したものである。
今日の国語の授業は3である。
どうしてかというと、・・・・・
○とってもおもしろかったり、おもしろくなかったり、いろいろあってよかったです。
○今日の勉強ははじめてだったので、ちょっと数字をつけるのはどうすればいいのか、と思いました。
○これからもがんばりたいです。
「○」をつけて箇条書きを意識した書き方である。
上記2例で、「どうしてかというと、・・・・・」となっているのは、板書をそのまま写したからである。また後者では、一文目も正確に視写できていない。しかし、この箇条書きを意識した書き方はとてもいい。理由文が3つも書けているからである。
■番号作文で授業感想文を書く
3日続けて授業感想文を書いてきた。理由文が多く書けるようになってきた。そこで、授業感想文の理由文を番号を使って書く書き方を教えた。
次の書式である。
今日の授業は○である。
どうしてかというと、理由は( )つある。
1)
2)
・
・
だから、今日の授業は○である。
注:「1)」は本来○付き数字だが機種依存文字のため「1)」と表記している。
『理由は番号を付けて、たくさん書きます。最後に2文目の( )にいくつ書けてかを書きます』
光村図書5年(上)「読むということ」の学習を行い、最後の5分間で書いてもらった。
作品例をあげる。
今日の授業は4である。
どうしてかというと、理由は(5)つある。
1)読むことがまた好きになったからだ。
2)線をどんなときに使ったりするのかがわかった。
3)書き込むは大事であることがわかった。
4)文章をどう読むかがわかった。
5)対話しながら読むことがわかった。
だから、今日の授業は4である。
クラスの中ではおとなしい児童の作品であるが、堂々の5個も理由文を書くことができた。クラス平均で3個の中での5個は立派である。初めてにしてはよく書けている。
番号作文で理由を書くと、とにかく、構成を考えずに思いついた順にどんどん書けるのがいい。
このように、授業感想文を1週間続けて、クラス平均5分間で200文字程度の感想文が書けるようになった。
■考察
上條氏は「授業づくりネットワーク(学事出版1993年11月号ナンバー74)」特集タイトル「授業感想文=子どもに学ぶ」より、「授業感想文でヒットポイントをさぐる」で次のように述べる。
次の書き出しで、感想文を書きなさい。
今日の国語は、○である。
どうしてかというと、・・・・・。
○の中には、1〜5の数字が入ります。時間は、5分です。
(中略)
今日の作文は、○である。
理由は□つある。
ひとつ目は・・・・。
ふたつ目は・・・・。
・
・
次にこの書式を教える。この書式が使えるようになると、子どもたちからの授業情報量がグンとアップする。(下線は筆者)
はじめの書式と後の書式は理由文にナンバリングをするか、しないかの違いである。
ナンバリングをすると、理由文を多く書けるようになる。ではなぜ、この書式をはじめから教えないのであろうか。
以前、上條氏に『「どのタイミングでこの後者の書式を教えるのか」、「次に」とはいつか?』との質問した。
氏の回答は至極簡単であった。
『この書式が必要になったら教える』
つまり、はじめの書式はとにかく自分の主張に対して一つでも根拠を書いてくれればいい。はじめは、書けない子はなかなか書けない。
しかし、それを繰り返していくうちに、だんだんと理由文が多く書けるようになってくる。
みんなが多くの理由文が書けるようになってきてはじめてナンバリング、(ここでは、「ひとつ目は・ふたつ目は・・・」)を教えるというわけである。
『子どもたちが必要になってから教える』、上條氏の作文指導はいつも子どもたちからの発想に基づいている。
2002年5月5日(実践!作文研究メールマガジン第117号掲載)