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2006年04月03日

【実践・授業感想文】

[実践・授業感想文]

------上條晴夫氏の授業感想文を追試する------

【新連載を始めるにあたって】
 私は、上條晴夫氏の「見たこと作文」は作文教育の金字塔を建てたと考えている。「見たこと作文」とそれにまつわる指導技術は我々作文教育に携わる教師全員が追試を行う価値がある。
 しかし、上條氏の実践でもう一つ落としてはならないものがある。それは「授業感想文」の実践である。授業感想文とは簡単に言って、授業のおしまいの五分間に書かせる「授業の感想文」である。
 佐藤民男氏は上條氏の授業を見に行った時にこの「授業感想文」を書いているクラスを観察して、次のように述べている。
 『子どもたち二十四人が一斉にえんぴつを走らせている。一斉にである。こんな光景は見たことがない。一人もボサーとしている人がいないのだ。ただの一人もだ・・・。
 結局、大学ノート一ページ分ぐらいの量をどの子も五分で書いた。「書けない子をなくす 作文指導の10のコツ(p8〜p9)」』
 私もこの通りの授業風景を見たら驚くだろう。しかし、上條氏は以下のように述べる。
 『(佐藤氏の記録を見て私は)少し慌てた記憶がある。(中略)どのクラスにもある、当たり前のことだと思っていたのである。』
 そして、このように書き慣れた子どもたちを育てた一つの方法が「授業感想文」であると述べるのである。
 これほど子どもたちに書く力を育てることのできる方法とはどのようなものか。その「授業感想文」の指導法を上條晴夫氏の著作を通じて整理していくのが今回の新連載を始める目的である。

■授業感想文とは
 授業感想文とは、授業を行ったあとの3〜5分を使って子どもたちに書かせる授業の感想文である。
 上條晴夫氏が教師時代の10年間に行って来た実践である。
 授業感想文の効果を氏の著作からまとめてみると、以下の三点に整理することが出来る。

 1)子ども理解(授業への不満・学習法の好み・関わり合い)
 2)授業改善
 3)書き慣れ

 この連載では、上條氏が行った授業感想文の実践を整理し、その効果を検証して行く。

■授業感想文の書き方
 授業感想文の書き方の典型的な手順は以下の通りである。
 授業のおしまいの5分間を使う。


 次の書き出しで、感想文を書きなさい。

 今日の国語は、○である。 
  なぜかというと、・・・・・。

 ○の中には、1〜5の数字が入ります。時間は、5分です。
 (「作文指導の10のコツ」p10より引用)

        
 この他に、『5(とてもおもしろい)、4(まあまあおもしろい)、3(どちらともいえない)、2(あまりおもしろくない)、1(全然おもしろくない)(同書p11)』を説明する。 
 この書式は、書き慣れていない子も比較的容易に書ける仕掛けが隠されている。
 以下の2点である。
・書き出し文を与えることにより、簡単に書くことができる。
・五段階評価をすることにより、自分のこれから書く感想文の立場が決まる。すると理由文が書きやすくなる。

 この他の指示として、以下の二つの指示を付け加えている。
 ・『理由の文はなるべくたくさん書きなさい』(同書11p)
 ・(一文が長くなってしまう時は、)『丸(句点)の数を稼ぎなさい』(同書p119)
 これらの指示は子どもたちの吐き出してもらうためのものである。短くてもたくさんの理由を書くことがいいとされる。
 以上の書き方を続けると、『もたもた書いていた子も、ひと月もするとどんどん書けるようになる(同書10p)』。

■授業感想文の運用法
 以下、簡単にどんな時に、どのくらい書かせるかをまとめておく。
 ・毎日3〜5分程度書かせる(同書10p)。
 ・ひと月くらい続けると効果がでる(同書10p)。
 ・自分(教師)が気に入った、工夫した授業を書かせる(同書11p)。
 ・少し控えめに書いてもらう。『あまり、ひどいことを書かれたら先生もヤル気がなくしちゃうでしょ。だから、おもしろくないなって書く時にも、あまりバーンって書かないで、少し控えめに書くっていうのかな。そういう配慮をしてください』(同書120p)

■授業感想文の実際
 私のクラスの授業感想文を紹介する。六年生で俳句の句会をした時の授業感想文である。


 ぼくは、俳句の授業でランクをつけるなら5です。 
 なぜかというと、人の句を聞き、人気などを決めることでやる気がわいてくるからです。
「もっとやりたい」 
という思いになります。 
 また、外に出て、いろいろなものを見て、俳句を作ることで創造力も身に付いてきたと思います。
 そして、「俳句には季語を一つ入れる」ことなども学べました。
 俳句を楽しく理解できたので、ぼくは5にしました。

 
 六年生後期の授業感想文である。クラスの中では、えんぴつが遅い部類に属する児童の作文である。
 句会でこの子の俳句が選ばれたわけではない。しかし、俳句の句会形式の授業に対する好感を感じさせる。

■参考文献
 今回の連載で使用する文献は以下のものである。
 雑誌論文
 ・「授業づくりネットワーク(学事出版1993年11月号ナンバー74)」特集タイトル「授業感想文=子どもに学ぶ」より、「授業感想文でヒットポイントをさぐる」
 書籍
 ・書けない子をなくす 作文指導の10のコツ(学事出版1992年刊)
 ・徹底マニュアル「楽しい学級通信の書き方」ネットワーク双書(学事出版1994年刊)
 そのほか、上記著作から分からないことがあれば氏にうかがい、そのことも出来るだけ書き留めて置くつもりである。


 
2002年3月3日(実践!作文研究メールマガジン第108号掲載)