リピートスピーチゲーム覚え書き
リピートスピーチとは、相手のスピーチを聞きメモを取り、そのメモを元に相手のスピーチを再現するスピーチである。
このリピートスピーチの授業を開発したきっかけは、いつも、子どもたちにメモを取らせるにはどうすればいいかと考えていた時である。
メモとは、自分が聞いてそれを紙に書く。自分流のメモでいいのだが、子どもたちのメモを見ていると、次の3点が気になった。
1)必ずしも、効果的に書かれていない。
2)そのメモを子どもたちは有効に使っていない。
3)何をメモするのかよく分からず、文章になっているメモが多い。必然的に書き漏らしていることが多い。
メモの取り方はすでに、ディベートのフローシートの書き方がある。"小学校 はじめてのディベート授業 5つの指導ステップ―シリーズ・教室ディベート〈6〉" (池内 清)
ポイントは、次の4つである。
①ラベルを正確に聞き取る。
②単語レベルで書く。固有名詞、数字に気をつける。
③省略記号を使う。
④言葉の関係を矢印を使って書く。
しかし、この4つのポイントが押さえてメモがとれているかどうかを普段の授業で検証するのは容易ではない。個別に教師が点検しないといけないからだ。
メモがキチンととれているかどうかを考えるとき、要は、そのメモを見て、そのスピーチが再現できるかでメモの質が決まると考えた。
そこで考えついたのが、リピートスピーチである。
ただ、このままだと授業としては、あまり面白くない。このリピートスピーチをゲーム化しようと思った。
全体の流れは、
スピーチを聞く→メモを取る→メモの確認→リピートスピーチ
となる。
はじめは、リピートスピーチの正確さをゲーム化しようと考えた。しかし、これが意外と困難であることに気がついた。
なぜなら、一つのスピーチを聞いて、それをリピートスピーチすると、判定者、リピートスピーチで対戦する人2名の合計3名が最低必要になる。これはこれでいい。しかし、先攻のスピーチをしているときに、後攻のスピーチ者がこれを聞くことが出来るので、明らかに後攻有利のゲームになってしまう。
また、リピートスピーチができた、できなかったで行うとゲーム性がかなり弱くなると思った。
そこで、次のように工夫をする。
スピーチの原型は他己紹介スピーチである。上條晴夫編「"論理的な表現力を育てる学習ゲーム" (学事出版)」より上條晴夫「他己紹介ゲーム」(学事出版刊)
これは、二人組になって、質問者と回答者に分かれ、例えば「テレビは好きですか」と聞きながら、問答を繰り返し、そこから得た情報を使って、他己紹介スピーチをするスピーチゲームである。
他己紹介スピーチの活動のポイントは以下の3つである。
1)問答
2)1分間スピーチゲーム
3)情報を取り入れて、そこから自分の解釈を一言添える。
リピートスピーチでは、この他己紹介スピーチの1)問答するところをバサッと切り取り、「テレビは好きですか」をテーマに自己紹介スピーチの原稿を書く。
これを元に、3人1組となり、お互いの自己紹介スピーチを1分間で発表をさせる。
3人のスピーチが終えたら、各自ワークシートに書いたメモを読む。
メモを順に追っていくとこで、リピートスピーチが出来るかを確認する。
もし、出来なかったら、言葉を継ぎ足す。これを数回繰り返し、完全にリピート出来るかを練習する。
この過程がとても大切で、この作業を子どもたちが行うことによって、メモを読み返すことで、メモの足りないところを自分たちが気がつくようになる。
他己紹介スピーチでは、メモを見ながらスピーチをする。
最後に、聞き得た情報から、この人はどんな人かを一言で述べる。
この仕掛けをつけることで、紹介されている人は、キチンと自分が言ったことが伝わっているかと同時に、相手は自分のことをどういう風に感じるかと聞き手意識を持ちながらスピーチを聞くことができる。
結果、リピートスピーチゲームでは、「ディベートのフローシートの書き方」と「他己紹介ゲーム」を合わせることにより、以下の3つのゲーム性を備えたことになる。
1)自分のメモが正しいかどうか。
2)1分間内のスピーチができるかどうか。
3)相手が自分に対してどういう風に感じているのか。
リピートスピーチゲーム
■リピートスピーチゲームのやり方。
相手のスピーチをメモにして聞き取り、そのメモを使って相手のスピーチを再現するスピーチ(リピートスピーチ)を行う。
1)自己紹介スピーチ原稿を書く。
私の名前は、○○です。△△から来ました。
私はテレビが(好き・きらい)です。
どうしてかというと、理由は3つあります。
1つ目は、…
(少し詳しい説明)
2つ目は、…
(少し詳しい説明)
3つ目は、…
(少し詳しい説明)
だから私はテレビが(好き・きらい)です。
こんな私ですけれど、よろしくお願いします。
2) メモの取り方を教える。
①ラベルを正確に聞き取る。
②単語レベルで書く。固有名詞、数字に気をつける。
③省略記号を使う。
④言葉の関係を矢印を使って書く。
3) 3人グループになる。
4) 自己紹介スピーチをする。(他の2人はメモを取る。)
5) メモを見ながら、スピーチの練習をする。(補う言葉があれば補う)
6) 他己紹介スピーチをする。(左側の人を紹介)
これから紹介する人は○○さんです。
○○さんは〜からいらっしゃったそうです。
○○さんはテレビが好きだそうです。
どうしてかというと理由は3つあります。
1つ目は、…
これらのことから、○○さんは、〜な人だと思いました。
7) スピーチを振り返りながら、おしゃべりをする。
8) ふりかえり(授業感想文を書く)
ワークシートはこちらから。著作権は私にありますが、ご自由にお使いください。
実践してみたら、ぜひ、ご感想をお寄せください。